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不意に1枚の紙切れが差し出された。
真っ白な紙に青いインクで何やら住所が書かれている。
「へ……?」
状況が理解できず、困惑気味に彼を見上げた。
「明日の午後8時、そこに来い。」
上質なシルク生地のようにきめ細やかな、冷たく、凛とした声で命令されれば、首を縦に振るしかない。
こくん、と頷くと彼は目を細めて笑った。
「うん、いい子いい子…♪」
上機嫌であたしの頭をくしゃくしゃと撫でる彼が、とても大人っぽく見えた。
どこか腑に落ちなくて彼の手首を掴む。
「あたしの方が歳上なんだけど。」
不満を露わにしてそういえば、彼が「はいはい、おばさん。」なんて言うからあたしも軽く彼を小突いた。
「中学のときはもっと素直だったんだけどな…。」
ぽつりと呟いたそんな言葉は当然彼に届くはずがなく、暗闇の中に溶けて消えていった。
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作者名：莉夢 | 作成日時：2017年3月23日 19時
