サイゼで駄弁る話【花巻貴大】 ページ1
「デートみたいじゃね」
大学生や高校生の集団からおひとりさままで、とにかく若者で賑わう店内の一角、私の目の前でエスカルゴを食べる花巻がそう言った。
「そんなことなくない？」
第一、なんでエスカルゴなんか頼んでるの、と言えば、花巻はスプーンに乗ったそれにフーフーと息をふきかけ、冷まし出した。
「え、無視？」
人の話はあまり聞かないやつではあるけど、と少し不服な私のだらしなく半開きになった口に、花巻はおもむろにエスカルゴを突っ込んだ。
「んん」
「うまいっしょ」
「…まあわりと」
今度及川と来たら頼んでみよう、と飲み込む頃には花巻は最後の1個を口に放り込んでいた。
「なあ、デートみたいじゃね？」
ほんの5分前と同じように花巻が口にする。
「…そうかなぁ？」
「あー、ティラミス頼も」
本当にどこまでも人の話を聞かないやつだな、と空のコップを持って立ち上がろうとすると、
「メロンソーダ」
とメニューから目を離さずに花巻はそう言った。やっぱプリンか、などとぶつぶつ言っている花巻がやけに可愛く見えて、いつもなら小言を挟むところを、黙って彼の分のコップも手にした。
ドリンクバーのコーナーに立ち、メロンソーダを押す手を引っ込めた。代わりにジンジャーエールとオレンジを押す。メロンは微塵もないが、不味くはないだろう、と悪戯心の中に良心が見えた。私の。
席に戻ると机にはティラミスもプリンもあった。
「なんだ、結局どっちも頼んだの。はい、メロンソーダ」
「お、ありが……んー、」
早速私作のオレんジンジャーエールを口に含んだ花巻は小難しい顔をした。怒っているのだろうか。さすがに大人しくメロンソーダにするべきだったな、と小さく後悔する。が、杞憂に終わった。
「ジンジャーと、…オレンジ」
「正解だよ。すごいな」
ほっと胸をなでおろして席に着いた私の口に、花巻は今度はプリンを突っ込んだ。
「てかさ、中間の課題多すぎねぇ？」
「…多い」
プリンを飲み込んでから返事をする。
「あー、松川が今どこ？だって」
「へえ。呼んだら？」
「えー、もう断ったって。お前とサイゼ来てるって」
「…ふうん」
さっきからプツリ、プツリと短い会話を繰り返している。完全に花巻に非があるけれど、楽だしいいか、と雑に話し続けた。
取り留めのない会話はその後も続いて、その温度の低い熱は頂点に達した。
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依(プロフ) - しおさん» わ、しおさん！！ありがとうございます！！！！！！嬉しいです！！！！！！ (2020年5月17日 21時) (
レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - コメント失礼しますとてもファンです。いつも素敵なお話をありがとうございます。最高です！！！！！ (2020年5月17日 20時) (レス) id: 2d9a1a0004 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：依 | 作成日時：2020年5月17日 20時
