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「侑、買ってきよるやろか」

ふと頭上から声がして、顔を上げると北がいた。

「購買のプリンなぁ。買えたら大したもんやで」

購買のプリンを買うことがいかに難しいか、1年間身をもって学んだ私は、そう笑った。

時計を見ると昼休みに入ってそろそろ5分が経過しようとしていた。
もう売り切れた頃だろうな、とお弁当を机に広げる。

つい昨日の席替えで運良く隣になった北と昼ごはんを共にしていると、廊下が騒がしくなるのが聞こえてきた。

と思えば、ほどなくして教室の扉が勢いよく開かれる。


「南さんっ、はぁ、…っすんません!っはぁ、遅なり、ました!」


大きな声で名前を呼ばれ、体が大きく揺れる。
同時にクラスも一瞬静かになった。
所々で「あれ宮侑とちゃう?」「宮ツインズの子か」「噂通りめっちゃイケメンやなあ」なんて声が聞こえてきて、すぐに元の喧騒に包まれた。


「びっ、くりしたぁ」


驚く私を他所に、北が先に声をかけていた。

「なんや侑。買えたんか」

「ゲッ、北さんもいはったんですか」


あからさまに顔を歪める宮侑に思わず笑い出しそうになる。
横にいる北は相も変わらず表情ひとつ変えずに「いたらあかんか」と投げかけていた。

「いや、……て、そんなことより、プリン売ってなかったんですけど!」

コロコロと表情を変えながら、半ば叫ぶように宮侑はそう言う。

「……そうか。買えんかったんか」

私がそう呟くと、宮侑は「えっ、あれもう売り切れやったんですか!?」と驚いた。

かと思えば今度は悲愴な面持ちになる。


「ほ、ほんま、すんません……。あ、明日!明日絶対買ってきますから、許してください。この通りや」


宮侑は体を90度に曲げて、顔の前で手を合わせ、大袈裟に許しを乞う。

「……ぷっはは」

大男の情けない姿に思わず吹き出した。

「えらいお利口さんやなぁ。ええよ、明日楽しみにしてるわ」


いつになく真面目な宮侑に笑ってそう言うと、彼はキラキラした目で「あざす!」と走り去った。


彼を見送ったあと北は、
「嵐みたいなやつやな」
と少し笑っていたような気がした。


そしてこの日私は宮兄弟もとい "宮ツインズ" は有名であることを認識したのだ。

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なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - うびゃぁ…………今まで読んできた中で一番好きです… (2021年4月10日 16時) (レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ちびさん» そう言ってもらえると嬉しいです^^お読みいただきコメントまで、本当にありがとうございます! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ感動しました!!最高です( ; ; ) (2020年6月2日 20時) (レス) id: c0c643d2d0 (このIDを非表示/違反報告)
Rikka(プロフ) - りるとさん» そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます^^ (2020年4月17日 8時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
りると - めちゃくちゃいい話でした!! (2020年4月15日 0時) (レス) id: 615da3bcde (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Rikka | 作成日時:2020年3月18日 10時

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