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その日、監督からユニフォームが配られた。
先輩たちに渡され、それから尾白に渡され、大耳も貰っていて、そして言わずもがな双子にも与えられた。
私は無性に悔しくなった。
手ぶらのままの北と2人で帰路につく。
「なあ北」
「なんや」
北の声はいつもと変わらなかった。
「私、悔しいて泣きそうや」
私がそう言うと北は一瞬固まって、それから ふはっ と吹き出した。
「何で笑うんよ」
「何でってそら、何で南が泣くねん」
北の笑顔が余計に胸を締め付ける。
「だって私、北が1番頑張ってるん知ってるもん」
「……毎日、ちゃんとやっとるだけやで」
そう言う北の笑顔はやっぱり少し悲しそうにも見えて、自分の愚かさを恥じた。
北だって、悔しくない訳ない。
きっと誰より悔しいに決まっている。
私が泣いてどうするんだ。
「そうやなあ。そういうやつやな北は。最高や」
全力で笑って見せると、北も笑ってくれた。
俄然、やる気が出た。
北のように、もっと自分に厳しくなろう、と誓った。
そうして私は双子にも、いっそう厳しくなった。
でも胸のざわつきは、依然として消えなかった。
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なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - うびゃぁ…………今まで読んできた中で一番好きです… (2021年4月10日 16時) (レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)
依(プロフ) - ちびさん» そう言ってもらえると嬉しいです^^お読みいただきコメントまで、本当にありがとうございます! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ感動しました!!最高です( ; ; ) (2020年6月2日 20時) (レス) id: c0c643d2d0 (このIDを非表示/違反報告)
Rikka(プロフ) - りるとさん» そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます^^ (2020年4月17日 8時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
りると - めちゃくちゃいい話でした!! (2020年4月15日 0時) (レス) id: 615da3bcde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rikka | 作成日時:2020年3月18日 10時