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side A



あまり認めたくは無かったが、私という人間は本当に脆かった。
ギリギリのところで私を支えていた硬い糸は、1度切れてしまうと元には戻らなかった。

北に初めて抱きしめてもらったあの日から、それ以前の私はいなくなった。


自分でも信じられないほど弱くなってしまった。


次の日学校に行って、いつものように下駄箱には紙が入ってて、廊下ではグチグチ言われて、物がなくなったりして。

それでもまだ耐えられた。
昨日北が助けてくれたやん、まだ大丈夫やんって。
だから私は侑にも治にも尾白にもいつも通り接することが出来た。


でもやっぱり北に見られると我慢できなかった。



部活に行こうとしたとき、北にぱっと手を掴まれた。

「それ、何持ってるん」

北の視線は私の手元に注がれていた。
いつの間に入れられたのか、今私が気づいて机の中から出した紙を見ていた。

思わず後ろに隠す。


「部活終わってから話そう」


じっと見つめる北の瞳は有無を言わさなかった。






頑張って切りかえて、少し楽しさを取り戻した部活を終えて片付けの時。
モップを取りに倉庫に入るとボールを磨く北がいた。


「南、ちょうどええわ。こっち来て」


ポンポン、と北は座る自分の足を叩いた。

「座って、こっち向いて」

言われるがままに収まると、北は私の背中に手を回した。
北の腕の中はやっぱりあたたかくて、安心できた。

自然と涙がこぼれる。


「南、知ってるか。
ハグはストレスの3分の1を解消するんやで」


頭上で北はそんなことを言った。

「せやからなぁ、しんどなったら俺がこうしたるわ」

そっと顔を上げると北は微笑んでいた。
つられて私も笑顔になる。

「……ありがとぉ」

私の声は思っているよりずっと弱々しくて、自分でも驚いた。



部活が始まる前を思い出す。
北の言う話はこれだろうか、と思っていると、北は
「また言いたなったら言うて。いつでも聞いたるから」
と私の頭を撫でて倉庫を出ていった。






北ってほんまにすごい。


何度目かのそんな思いに駆られた。

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なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - うびゃぁ…………今まで読んできた中で一番好きです… (2021年4月10日 16時) (レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ちびさん» そう言ってもらえると嬉しいです^^お読みいただきコメントまで、本当にありがとうございます! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ感動しました!!最高です( ; ; ) (2020年6月2日 20時) (レス) id: c0c643d2d0 (このIDを非表示/違反報告)
Rikka(プロフ) - りるとさん» そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます^^ (2020年4月17日 8時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
りると - めちゃくちゃいい話でした!! (2020年4月15日 0時) (レス) id: 615da3bcde (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Rikka | 作成日時:2020年3月18日 10時

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