化け物になってもきみの返事を待ってる【赤葦京治】 (ページ5)

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首夏の合図ページ5

お互いを認識したきり、沈黙が訪れた。離れたばかりの頃は、毎日のように連絡を取りあって、それでも足りないくらいに話したいことが沢山あった。それなのに、今さら何を話せばいいのか、私には全くわからなかった。

ジー、ジー、と蝉の鳴く声ばかりが、私たち二人の空間にできた隙間を埋める。向こうから聞こえる子どもの声は、もはや違う世界のもののようだった。

彼だと気がついて思わず立ち上がった私はいつのまにか木陰から抜けていて、それきり頂点から少し傾いた太陽の下で動けずにいた。じわりと髪の生え際に浮かんだ汗が、輪郭をなぞるように頬を伝って、顎で少し留まる。やがてぽと、と落ちたそのタイミングを見計らったかのように静寂を破ったのは、京治だった。

「……元気にしてた？」
「……それなりに」

京治は何かを言おうとしたのか、口を開いて、閉じて、それからまた開いてそう言った。そんなこと、と思わず拍子抜けしそうになったが、とうとう言葉が見つからないままの、さらにはまともな返しもできないような私よりはマシだ。

「友達はできた？」
「できたよ」

私が京治を真っ直ぐに捉えた視線を、彼は避ける。

「どんな子？」

言いながら京治はバッグを肩にかけ直した。やはり彼の視線は、私のそれより少し下にある。

「子っていうか……背が高くて金髪の人……あ、別にヤンキーではないんだけど。あとちょっと賢くて愛想悪い」

私がそう言って改めて、さっき会ったばかりの時のように京治と目が合った。ふっと力が抜けたように、僅かに彼の顔が緩んだのがわかった。かと思えば、京治は今度は眉を寄せて悲しそうに小さく笑う。

「……そっか。よかった」

何とも言えない笑顔で、京治はそう言った。その刹那、私の心にぷす、と針が刺さった。ほんのわずか、目視できないほど小さく空いた穴から、得体の知れない何かがするすると流れ込む。

息が詰まった。