化け物になってもきみの返事を待ってる【赤葦京治】 (ページ15)

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清夏の陽ページ15

シューズの摩擦する音、ボールをつく音、笛の音、それから太くて明るい芯の通った声。少し離れたところからでも聞こえたそれらが、体育館の入口に近づくにつれて激しく主張する。

扉を開ければ、中の空気は外とは比べ物にならないくらいムッとしていて、一瞬入ることを躊躇いながらもそっと1歩を踏み入れた。
京治のお母さんについて体育館の端を小走りで通る間も、私は自然とコートの上でプレーする京治を捜してしまっていた。

ふとさまよった視線が京治のそれと交じり合って、思わず逸らす。あの日の京治が、彼のくれた言葉が、二人で見た花火が、鮮明に頭の中に映像として流れ出した。

途端にきりり、と胸が痛んで頬が熱くなった。保護者として差し入れの準備を始めた大人たちの輪の外で、私はひとりぼうっと佇んだ。

片方のコートの中を動き回る京治ばかりに焦点を当てる。無意識だった。高く、放物線を描いて上がっては自由落下を始めるボールの、その下に滑り込むように、気がつけば京治はそこにいる。
他意なんて何にも無いはずなのに、私の双眸は彼を追うことをやめない。

「危ない」なんて誰かが発した声も、眼前でパチン、と何かが弾けたような軽い爆発音も、全てが蚊帳の外のように、ただただ京治だけが私の目の中で動き回った。

「……何してんの。ボケすぎでしょ、危ないんだけど」

頭上から降る声が、私を一気に眠りから覚めさせるみたいに現実に引き戻す。わずかな時間に白昼夢でも見ていたかのような感覚だった。

ハッとして焦点を合わせた先にいたのは、宮城でできた初めての友達だった。驚きと、暑さと、それから夢見心地のせいか、上手く頭が働かない。

「え、月島……？」

見知った顔に心がすっと丸く落ち着いていく。
ボールに弾かれて赤くなった手のひらを、握っては開いてと繰り返す彼の背から、体育館の暖かな色の照明が差して、目の前をちらちらと瞬かせた。