【呪術廻戦】もう一度その声で名前を呼んで。2

続 ページ28

『吉野くんが、凪さんが人の心に呪われたって言うなら俺(人の心)が救うから…！俺じゃなくても、虎杖くんでもいいんだ。ただ、誰だって人の心に救われることだってあるんだよ…！』


傑兄に救われた。

死んだ記憶を取り戻したあと、何を信じていいのか分からなかった。

兄上が存在するのかどうかも不安で、呪霊でもなく人間に…しかも呪術師に殺されて怖かった。

もう一度死にたくなんてなかった。

でもあの人の大きすぎる優しさに染まってしまったから、何時までも幸せに笑って欲しいって思ったから、俺は死んで後悔なんかしてない。

まだ怖いよ、呪術師は。

呪霊も人間もやっぱり怖いけどさ、救われたなら今度は俺が救いたいじゃないか。

俺が死んだことで傑兄の力になれたなら、傑兄が死なずに済んだならそれ程嬉しいことはないよ。


「順平、高専に来いよ。バカみてぇに強い先生とか頼りになる仲間がいっぱいいるんだ。皆で協力すれば順平の母ちゃんを呪った奴もきっと見つかるから、必ず報いを受けさせてやるから…」


式神が解けて座り込んだ吉野くんに虎杖くんがそう語りかけた。


『そうだね、京都に来てもいいんだよ？…なんて』


だめだな、頭が痛い。

心臓が握りつぶされそうなほど痛い。

氷が肺に刺さったように息が上手く出来ないけど、ここだけ切り抜けらればふたりの元から姿を消せればどうなっても平気だから。


『これ、もっててね…離しちゃだめだよ…』


もう視界はぼやけているから半分手探りだけれど、吉野くんと虎杖くんに水晶を渡せたと思う。


「おいお前それは…！」


あれ、兄上の声だ。

そっか、兄上は知ってるもんね…

でも、内緒にして。

迷惑かけたくないの。


『ひみつにして、ね…』


だめだなぁ、眠くなってきた。

瞼が落ちる。

おやすみってまだ言ってないのに…

玉響の間。→←朧、水に深く沈んで

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す