無敵の貴方が、助けてくれることを ページ32
「A」
その声に振り向く。
『マイキー』
声の人物に微笑んで、その人のちょっと後ろで歩き始めた。
「ケンチンとタケミっちは？」
『ケンちゃんはエマちゃんと一緒にいる。タケミっちはヒナちゃんと一緒にいると思うよ。』
俺の言葉にそっか、と返したマイキー。
「A、ベビーカステラ食べたい」
『ん、行こっか。』
字面だけだと俺がマイキーを連れてるみたいだけど、実際は俺がマイキーのあとをついて行ってるのがなんともらしいなと思う。
『今日はどら焼き持ってないの？』
「Aと一緒にいるのにどら焼き持ってちゃ会話に集中できないでしょ。」
これからベビーカステラ食べるつもりなのによく言うよ、なんて返しながらもこういうのがずるいと思う。
もう充分抜け出せないほどにマイキーの沼に浸かってるのに、更にもがくことを許せられないほど、深くに浸からせてくるところがずるすぎる。
「Aは何したい？」
『俺は…マイキーと一緒だったらなんでもいいかなぁ』
「なにそれ。…金魚すくいでもするか？」
『する』
マイキー、甚平似合うよね…なんて口にはせずに思って。
ポツリ、と降ってきた雨は次第に強くなっていき、マイキーに手を引かれて屋根の下へ向かった。
「ダイジョーブ？」
『え？うん、大丈夫だよ？』
「顔色、悪ぃけど。」
いつもとは違うことを願っている、だけど。
もし同じだったら、俺が何も変えられていなかったら。
そう考えると泣きそうになる。
『…ごめんマイキー。俺、ちょっと行ってくる。
…戻ってこなかったら、駐車場に来て。…お願い。』
「は？ちょっと待て、おい」
何も無かったら、マイキーを巻き込むのはダメだ。
だから、見てくるだけだから。ごめんね、ちょっとだけ待っていて。
それから、もし俺が戻れなかったら。ケンちゃんがピンチだから、俺じゃきっと無理だから。
その時は、マイキーが助けに来てね。
信じてるよ。
雨が強くて前がよく見えないけれど、頑張って駐車場に向かって走っていた時だった。
「みつけた、Aちゃん」
頭に走る衝撃。鈍器で殴られる、頭が真っ白になる感覚。
なに、まって、何が起こったの？
もちろん、ほんとに、痛くないんだけど。
ぐらぐらする、目眩がする、血が出る感覚がする。
「うんやっぱり、血を流してる方が可愛いよ」
その声に振り向く。
知っている顔だった。
お前、お前は。俺が痛みを感じなくなった＿＿＿原因。
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なんばん - すごく面白いです！ドストライクです！書いてくれてありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2021年6月2日 1時) (
レス) id: 0eb447a2e9 (このIDを非表示/違反報告)
Kira(プロフ) - いつも読ませていただいてます。面白くて大好きです。これからも頑張ってください!! (2021年5月31日 17時) (レス) id: 5ee4acc04b (このIDを非表示/違反報告)
るい - とっても面白いです！！ (2021年5月29日 1時) (レス) id: b95688f803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：だしまきたまご | 作成日時：2021年5月18日 2時
