治らないなんて希望を捨てないで【小説】

元気なのはいいこと？【綾】 ページ34

『どうかしましたか、悠月さん？』


とある朝。
料理を差し入れに来てくれた瞑さんが、ついでにと外に連れ出してくれた。
玄関に行こうと思ったら、リビングの方から泣き声と困惑したような声が聞こえる。
放っておくのもあれなので、瞑さんに頼んで覗きに行った。


「あ、瞑くん、綾ちゃん！ちょうどいいところに！」


そこにいたのは、困り顔をした家主さんこと悠月さん。
その悠月さんの側で泣いている……えっと、愛雷 明さんだったかな。
友人以外の人の名前をすぐに忘れちゃうの、いい加減治しませんとねぇ……


『……どうされたんですか？』

「いやぁ……実はね？」


要約すると、頭を撫でたら泣き出してしまって、
泣き止まそうと背中をぽんぽんしたら、余計に泣いてしまったと。
………。


『……そのままでいいのではないかと。』

『同意です。』

「うえぇ！？なんで！？」

『泣きたい時は、泣かせといた方が時にはいいものですよ。
別に悲しくて泣いている様子じゃありませんし……』

『そうそう。無理に泣き止ませなくてもいいと思います！』

「えぇ〜……そういうもん？」

『そういうもんです。
それじゃあ、私たちは外に出るので、何かあれば他の人を頼ってください。』

『頑張ってください、悠月さん〜。』

「え、ちょ、待って2人とも〜！」


後ろから制止する声が聞こえるが、無慈悲にも扉を閉める。
そのまま瞑さんに頼み、外に連れ出してもらう。


『……鈍感さんですねぇ。』

『っすね。』

『あの人、意外とモテますよね。』

『ですね……あ、でもあの人の好きな人とかは聞きませんよね。
悠月さんに好きな人っていると思います？』

『……さぁ、どうでしょうね。』


なんて濁した回答をしたが、私はなんとなく彼の好きな人を理解している。
無意識下で思っている人を当てるのは、かなりの至難の技でしたが……
エレンさんとも協力してなんとか、考えがまとまりました。
合っているかはわかりませんが……ふふ。彼もそのうち、自分の気持ちに気づくのでしょうか。


『……ポピー全般の花言葉を知っていますか？』

『ん……知らないですね。なんですか？』

『ポピーの花言葉は……』



恋の予感

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