治らないなんて希望を捨てないで【小説】

恥ずかしい 芹香 ページ6

あぁ、どうしようかと頭を悩ませる

ここはリビングで、悠月さんが机に突っ伏して眠っている姿を見つけたのだ
悠月さんの部屋に入ろうとしたのだが、鍵がかかっていて入れなかったため、悠月さんに会うのは諦めてリビングに来てみたところだった


起こそうか、それとも毛布を持ってきてかけるだけでこの場を去ろうか…と迷う
体勢的に起きたら体が痛いだろうし、長いことここで何もかぶらずに寝ていたら風邪もひいてしまう

起こすか、否か
｢起こす｣がやや優勢だった


迷っていると灯里さんがいらっしゃったため、頼んで悠月さんを起こしてもらった
起こし方があまりにもスマートで、かっこいいなぁなんて思ったりして


灯里さんが洗面所に入っていくのを見届けて、起きたばかりの悠月さんに声をかける


｢悠月さん、おはようございます。｣


悠月さんの寝起きのふにゃりとした声で、｢芹香ちゃん…おはよう｣と返ってくる


｢何の用だった？｣

そう聞かれたがそれと言って重要な用事はなく、ただ話したくて来ただけなのだが、今になって少し恥ずかしくなってしまって誤魔化した

｢いえ、今日は少し早起きしてしまって。なんとなくの気分でリビングに来てみたら、ここで眠ってしまわれていたので起こしただけなんです｣

まさか｢早起きしてしまってなんだか寂しかったから会いたくて部屋に伺った後にリビングに来てみたら見つけた｣なんて、言えるわけもなかった

灯里さんが洗面所から出て、私達に声をかけてからリビングを出て行った


｢そっかそっか、ありがとう。ちょっと色々してくるね｣

洗面所を指さしてそう言った悠月さんは、ゆっくりと立ち上がって身だしなみを整えに洗面所に消えていった


わざわざリビングに来て立っているのもなんだか不自然かと思い、さっきまで悠月さんが座っていた椅子に腰掛けると、やはり人の体温がまだ残っていた





悠月さんが戻ってきた後、リビングの冷蔵庫から適当に何か飲み物を頂き、悠月さんと別れて自室に戻った



がちゃりと自室のドアを閉めると、目の前には通路がある
右側にはシンクやコンロ、冷蔵庫
左側にはトイレや洗面所とお風呂場に続くドアがある

そしてその先に、ベッドやクローゼットがあるメインの部屋に続くドアがついている


冷蔵庫から水を取り出し、ケトルに入れた
お湯を沸かしている間に部屋のベッドの下からカップラーメンを取り出す


｢朝からこれは健康に悪いかも…？｣


けれど好きなのだから仕方ない

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