【な組】契約が愛に変わるまで【紫】

契約1 ページ2

それはある日、こんな一言から始まった。

「いわばこれは契約結婚ってやつだね」

「はぁ…」

何故こんなことになったのかと言うと。

話は数時間前に遡る。

「縁談の申し込み？」

こんな没落寸前借金持ちの五十嵐組の娘に？なんの得があると言うの？

「勿論お前が嫌なら無理にとは言わない」

でもなんでこの没落寸前借金持ちの娘に縁談を申し込んだのかは気になる。

「……お話だけなら聞いてもいいかなって思うけど」

……なんて返してしまってあれよあれよと言う間に縁談の場か設けられ冒頭に戻る。

「契約結婚……何故没落寸前借金持ちの五十嵐組に？」

そりゃあうちだって昔はそこそこ強かったけどさ。

「それがね、俺との縁談の話が後を絶たないんだよ」

そりゃその顔だったら尚更ですね。

綺麗な顔してるもの。なんて思って私は日本茶を一口飲む。

「でもどれも自分の組を強くするためのひとつに過ぎない」

「そりゃ俺ももうそろそろ結婚してもいい歳だけどね〜」なんて言う。

上手い話には裏がある……てとこだったわけね。

「でも君の組や借金を肩代わりしてあげる代わりに」

「戸籍上夫婦になれば貴方は縁談の話が来なくなると」

「そーゆーこと」

……それこそ上手い話には裏があるだ。

でも私が我慢すれば組は救われるし借金もチャラになる。

「……わかりました」

だったら答えはひとつしかない。

「借金のことを守っていただけるなら契約結婚のお話、お受けいたします」

救えるのなら喜んで身を差し出そう！

「契約成立、話が早くて助かるよ」

本日、五十嵐Aはな組の若頭紫藤那々の(戸籍上)妻になって。

紫藤Aになりました。

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