Yasu ページ11
彼はモテる。それはもう腹が立つほどに。
今日だって紙袋いっぱいのチョコレートを貰っている。
そりゃまあ、かっこいし優しいし、女の子ウケはいいだろう。
私だって渡せるものなら渡したいとは思う、癪だけど。
でも私のチョコはお世辞にも美味しそうとは言えないし無理だけど。
『はぁ...自分で食べるか』
「何をですか？」
『うわっ...なんだなかるてぃんか』
「あ、バレンタインのチョコですか？」
『まぁ渡す相手いないんだけどね』
「え、じゃあ僕ほしいです」
『いいよー味の保証はしないけど』
「すごい美味しそうじゃないですか。ありがとうございます。」
『それはよかった』
自分で消費するという悲しい結末を迎えずに済んだことに感謝をしつつ、自分の出番の準備を始めた。
いつも通り出番を終えて帰ろうとしていると、突然後ろから声をかけられた。
「なあ、もう帰んの」
『うん。ヤスは帰らないの？』
「いや帰るけど...ちょっと待ってろ。荷物とってくるから」
やけに機嫌の悪そうなヤスに何かしてしまっただろうかと考えていると、小走りで戻ってくる姿が見えた。両手には朝見た時よりも明らかに増えたチョコレートが抱えられていて、もはや感動の域に達している。
「待たせてごめん、帰ろう」
『うん』
一緒に帰ろうと声をかけてきたのはヤスの方なのにも関わらず何も話さないからただきまずい時間が流れていた。
「...今日、バレンタインだな」
『そうだね』
「チョコレート、配らねえの？」
『まあ義理ならわざわざ渡す必要もないかなって』
「じゃあ本命なら渡すわけ？」
『うーんまあ渡すなら本命だよね』
突然立ち止まったヤスに、どうしたのと聞く前に腕を引かれて抱きしめられた。
『ヤス...？』
「お前、なかるてぃんのこと好きなのかよ」
『は？』
「俺、お前がくれるの待ってたのに」
『いやあんたあんだけもらっといてまだ欲しいの？』
「お前からのが欲しかったんだよ。でもチョコ持ってる雰囲気すらなかったからてっきり誰にもやらないのかって思ってたのに」
『私だって誰かにあげる予定はなかったけどなかるてぃんが欲しいって言うから』
「じゃあなんだよ。俺も言えばくれるのかよ」
『今チョコ持ってないし渡せないけど』
あーもう！と急に大声を出したヤスに驚いた私に構わずヤスは捲し立てる。
「やっぱなかるてぃんの分しか用意してなかったんだろ！？あいつ以外お前から貰ったやついなかったし！はっきり言えよ！」
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作者名：苺砂糖 | 作成日時：2024年2月10日 22時
