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「駄目って言ってるでしょうカリノ」
ちらりと覗き見る。二人いる。片方は職員の人。もう片方は……男の子だ。綺麗な青い髪の毛と、魚みたいな鰭や鱗が生えている。魚人族の男の子か。たまに見かけていたけど、特に関わりはなかった子だ。男の子はこちらに背を向けていて、顔は分からない。
そのまま離れれば良かったのだけど、好奇心で私は離れず見守る事にする。
「夜は危ないから外に出ないでって前も言ったでしょう?」
カリノと呼ばれた男の子は答えない。職員の人は困ったみたいに肩をすくめて、次はやっちゃだめよと言い顔をあげ……目が合ってしまう。私は咄嗟に隠れた。
足音がこちらに来て、そして声をかけられる。
「コーディリア、どうしたの?」
「ご、ごめんなさい先生……えっと、聖書がどこにあるのか聞きたくて」
好奇心で覗いたと言うのが憚られて、嘘をついた。聖書だったのは、昨日机に置いてあった聖書を思い出したからだ。職員の人はああ、と相槌を打って私の手を引いて図書室へと連れて行く。驚いたけど、聖書の場所を聞いたのだから仕方ないだろう。
視線を感じて振り向くと、男の子がこっちを見ていた。深い青色の目でじっとこちらを見ている。私は何だか気まずくて目を逸らしてしまった。覗き見していた事が恥ずかしかったし、それにその子は少し怒っているような表情をしていたから。
図書室の扉が開かれ、職員の人は本棚から本を一冊手渡してきた。昨日の夜机に置いてあった聖書と同じ物だ。
「ありがとうございます、先生……あの、あの子何をしたんですか?」
「夜に外に出ちゃってたの。コーディリアはそんな事しちゃだめよ?」
「は、はい」
あの男の子はそんな事をしていたのか。そういえば昨日の夜、ベッドが一つだけ空いていた。もしかするとあれがそうだったのかもしれない。私は頷いて、席に着いて聖書を読む事にした。他にやりたい事もなかったのだ。
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