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目が覚めたら私はいつの間にか孤児になっていたらしかった。私は孤児院のベッドに寝かされていて、そこの先生から、母の事を聞かされた。
母は悪魔へと堕落してしまったけれど、聖職者様が祝福してくださったから安心してほしい、と。祝福されたから魂はアネヘーの御元へ向かっただろうと言っていた。私はそれを、やっぱりぼんやりと聞いていた。
受け入れ難かった、というより、単に状況が分からなかったんだろうと思う。だって私はその時も、いつになれば母が迎えに来てくれるのかとか考えていたのだから。帰ったら母の作るシチューを食べたり、近所で花冠を作りたいとか思っていたのだ。
けれどまあ、当然といえば当然なのだけれど、そんな事にはならないらしかった。私の村は既に焼けて滅んでいるし、母も祝福されているんだから。
「いつ帰れるのかな」
ベッドの中で何気なく呟いた。誰からも返事はない。部屋にはたくさんの孤児達がいたけど、皆眠っていたから。
孤児院は正直、悪いところではなかったと思う。たくさんの孤児がいたから一人あたりのスペースが小さかったけど、寂しくはなかったから。きゃあきゃあという声が時に煩わしく感じる事はあったけれど、それだけだ。私の暮らしから母が消えて、代わりに孤児の仲間が入り込んできていただけで。
寝返りを打つ。眠らないといけないのに、眠れない。
孤児達と暮らして楽しくなかったわけじゃない。いろんな村からここへ連れてこられた彼らは、私の知らないいろんな遊びを知っていた。それらは私の心を癒やしてくれていたけれど、それでも私はやっぱり母が恋しかった。母の魂がもうこの世にない事は知っているけれど、私は母に会いたかった。
次に頭に浮かんだのは、母を殺した、鎧を着込んだ聖職者様。
聖職者様……神に尽くす人。神のために人を救い、神のために異端を祝福する人。
あの聖職者様が母を祝福した事を恨んでいるわけじゃない。もし聖職者様がああしていなかったら、私は母に堕落させられて、悪魔となっていたのだから。でもどうしてか、私は聖職者様の事が頭から離れなかった。
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