Always with you【佐野玲於】

【ゆっくり】 ページ31

玲於side








詩音を連れてきたのは、海。



もう7時過ぎてるのに夏だからまだぼんやり明るい。






「これ、玲於くんのお気に入り?」


「うん、上手くいかなかったり、嫌なことあったらよく来る。」






そう言うと詩音の瞳が揺れる。



唇噛んで泣きそうなの耐えてる詩音。






…詩音は昔から絶対泣かない。








「いいね、ここ。」






「だろ。」







びっくりするほど白い肌に高い鼻、色素の薄いショートボブの髪に、同じ色の大きい目。





……あいかわらず整ってるなぁ。



横顔がびっくりするぐらいキレイ。





昔も一緒によく海見たよね。




その時は俺が連れてきてもらったんだっけ。





夜ここで空見てたら、詩音も海で空見てないかなーって来たのがきっかけ。


気に入って結構な頻度で来てる。







「色々あると思うけどさ、悩みとか。ない人なんていないと思うし。」





「うん。」






「ここで空見てたら、どうでもいいやって思えない?」




「…わかる。私もよく夜の海行ってたから。」






儚げに微笑む詩音を抱き締めたい衝動に駆られて

でも




約束は守るよ。





伝えるのはダンサーになってから。




はぁ、早く夢叶えなきゃ。







「なんでもいいから頼ってよ。」





「…ありがとう。」







交わす言葉は少ないけど、そんな時間もなんか心地よくて。




…詩音もそう思ってくれてたら嬉しいな。




まるで時間がゆっくり流れてるような、




不思議な空間。








「寒くない?」



「大丈夫だよ。」





このまま時が止まってしまいそうなぐらい、



時の体感速度は遅くて。









…ずっとこのまま2人でいれたらな。








「…俺、忘れてないよ」






「…私もだよ。」









……2人の手は繋がったまま。









＿

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