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陸ノ弐 走れ想うままに ページ27

【夢から立ち去る前のこと】


これは、杏寿郎に起こされる前のAの夢の中だ。Aは気付けば、大輪の藤の花が咲き乱れる空間に立っていた。

もう在るはずのない日々に恐怖を感じて、“破れていた”塀の向こうに走ったのは覚えている。無我夢中だったので気付かなかった。

後ろを見ても、ただ咲き乱れる紫色の花のみが広がっている。戻ることを諦めて、前を見る。果てしない風景に、また恐怖を感じた。

『……杏寿郎、さん』



芯まで冷えきった体を抱き締め、一歩を踏み出した。空間の中の空気が動いたことを感知して揺れる。それと同時に藤も揺れた。

張り詰められた空気に、身を震わせて歩みを速める。ツン、と白梅香の匂いが鼻孔を擽った。嗅ぎ慣れた匂いに感覚が麻痺する。

溜め息を溢した。このまま、戻れないのだろうか。彼処に居たら、可笑しくなってしまう。だが、このままでも危うい。

誰も居ない此処は、先程から目眩がする。人は支え、寄り添い合う生き物だ。誰一人居ないこの場所は、精神を狂わせる。

最後まで手を握ってくれた、あの感覚を鮮明に思い出しながら走り出す。特に意味はない。束ね結われた髪が乱れ、解れた。









“A、起きろ!”









心の外側を揺らされる感覚。優しい温もりが素肌を撫でた。光の方に手を伸ばすが、届かない。彼の声が聞こえたのに。

『これは、夢なのに』









“A!お願いだから、起きてくれ!”









弾けるように、視界が割れた。鏡に映った景色が割れるような感じ。破片に別れたそれらは、キラキラと光って発光する。

目映くて目を瞑った。









目覚めれば、最愛の彼の腕の中。

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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時

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