肆ノ壱 最後に見た姿 ページ19
【それが最後の姿だった】
千寿郎には、偉大な兄がいる。鬼殺隊の炎柱まで上り詰め、強い呼吸を習得し、どんな人よりも笑顔が眩しい自慢の兄だ。
千寿郎には、聡明な義姉がいる。その偉大な兄の妻で、とても優しく、とても美しい人だ。笑顔に関しては不器用だが。
「兄上、義姉上、どうされたのですか?」
「うむ、お館様から文が送られてきてな！」
『その任務に、私も同行するように指令がきたのですよ』
「え!?」
凛とした佇まいで、背筋をしゃんと伸ばした義姉。それに相対するように座り、ひたすら唸りながら腕を組む兄。
二人から発された言葉に驚きを隠せない。兄が不在なのは日常茶飯事だが、義姉がいなくなるのは予想外だ。
任務にも、本来なら隊員の家族で会っても連れていくのはご法度だろう。だがその送られてきた文には、きちんと記されている。
「義姉上まで行ってしまうんですか……?」
『産屋敷様からの、ご依頼ですし……』
「短刀の日輪刀まで、一緒に送られてきた」
兄が差し出したのは、色変わりの刀で間違いがない。刃が既に白銀色に染まっている。義姉はもう握ったのだろう。
自分では変わらなかった刀の色が、変わっているのだ。やはり多少はショックを受けた。それでも納得してしまう。
義姉の旧姓は雪代家。雪の呼吸を伝授されてきた一族だ。鬼殺隊には女の剣士もいると聞く。義姉にはその資格があったのだろう。
もちろん義姉は隊員ではなく、隊員のトップの妻であるのだが。兄はいつも笑顔の顔を、少しだけ悲しそうに微笑んだ。
「Aを連れていきたくない！」
『何故です?』
「危険だからだ！もし君の綺麗な肌に傷がついたらどうする?それに、千寿郎を一人で残していきたくない」
「兄上、父上を忘れています」
「むう」
「それに、僕は一人でも大丈夫です。兄上は義姉上を守ってください」
『千寿郎……』
「兄上なら、かすり傷一つだって義姉上を傷つけないですよ」
「……確かに、俺はあの日。Aを守り抜くと誓った。なら、傷などつけるわけがない！」
『ですが、千寿郎が』
「僕は大丈夫ですって。義姉上はご自分の責務をお果たしください」
義姉は無言で見つめ、それからゆっくりと頭を撫でてくれた。暖かい温もりを感じながら瞳を閉じる。深い愛情を心で感じた。
兄と義姉の心配性を直すため、自分は精一杯背伸びをして我慢しよう。
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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (
レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：セニオリス | 作成日時：2019年7月8日 14時
