追憶ノ伍___死の贈り物 ページ11
【彼岸花の墓参り】
今日も今日とて、墓参りだ。何時もなら日の差した頃に行くのだが、今日は忙しくて無理だった。
危険なことを承知して夜に墓参りに行ったのだ。月明かりだけを頼りに、夜道を歩く。目だけが良いことが今を補助している。
彼岸花の花畑を越えれば、もうすぐ屋敷だ。墓は、屋敷の裏にある雑木林の奥なので近くにあることも夜に行こうと思った理由。
裏の塀についている小口を通って、屋敷に戻ったときだった。悲鳴が聞こえた、聞き慣れた、弟の縁の声。
慌てて、聞こえた声の元に走った。月明かりから、だんだんと夜明けに近付いていく。太陽が顔を覗かせた。
声の聞こえた部屋の襖を、無我夢中で開け放つ。血の匂いがした。いつもなら自慢の、良い目が惨劇の跡形を捕らえたのだ。
『……え…に…し?』
掠れた声で弟の名を紡いだ。空になった瞳が虚ろげに私を映している。もの言わぬ骸となったその姿。酷く朧げだ。
『あ……あぁ……』
嗚咽が零れた。止まらない。溢れて、留まることを知らない。泣き声は出なかった。それでも、嗚咽だけは空しく響いた。
震える手を伸ばした。弟の小さな体を抱き締める。まだ、十歳なのに。どうして、こんなことになったのか。
やりたいことも、やらなければならないことも、もうできない。朝日は部屋を照らす。夜明けのヒンヤリとした空気が染み渡る。
『ごめん……ね』
愛してた
『え……にし、ごめんね……』
無力だった
『縁っ……』
どれだけ悔やもうとも、愛しい弟は戻らない。
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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時