冷酷な王子に恋、始めました。Takuya.K (ページ45)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:103,673 hit

44love ページ45

「…………んっ……、」

サッカー部の号令の笛の音

音楽室から聞こえる楽器の音
　

廊下や、下校中の生徒たちの笑い声

　

すーっ…と耳に入り込んできて重たい瞼を開ける。

　
目を開けた先には、白で統一されたやたら綺麗な
ベッドの上に寝ていた。

　
………私、何でこんなところに…。

「………あっ…、」

　
そっか、多分私、あの時……………

本当、ばかだよね。何がしたいんだろう。
何のために拓弥先輩から離れるって決めたの？
　

　

……こんなに、…こんなにっ、拓弥先輩に心揺らしてちゃ…、

　

「………また、元通りになれる訳じゃないのに…っ、」

そう。こんなにも拓弥先輩に躍らされる心を
そのままにしても、“好き”の気持ちが募るだけで…

　

でも、前とは違って

前はまだ、ましだった。

今は、好きの気持ちがどんなに増えても、前のように素直に気持ちを受け止められない。

私が、拓弥先輩を避ける前のようにはいくら戻そうとしても
絶対的に無理なはずだ。

………それは、私が一度作ってしまった、堅い壁だから…。

　

こうなることは前から分かっていた癖に素直にならなかった私が
すべて悪いんだ。

そう、改めて痛感した途端

　

何かがピキッと壊れる音がして

　

溜め込んでいた大粒の涙が頬を伝った。