標的17 麦は麦でもちょっと違う ページ1
トーマ視点
二十三時。
体育館に足を運ぶと、既にヴァリアーと主君達は集まっていた。
一人足りない事をリボーンに尋ねると、此方の霧の守護者はまだ来ていないと云う。
今日は霧の対決なのに、と獄寺が貧乏揺すりをしていた。
程無くして現れた城島と柿本に、主君達が顔を顰めた。
この二人が慕っている人物は一人しかいないのだ。
主君が黒曜ランドで倒し、投獄された筈の彼……六道骸。
主君が名を叫ぶ。
城島と柿本の後ろから聞こえる妖しい笑い声は、しかし高い女の物だった。
｢我が名はクローム。クローム髑髏｣
声の主が主君の前に躍り出た。
女物の黒曜の制服を着、六道骸の三又の槍を持つ彼女は、「クフフフ」と彼と同じ笑い方をする。
紫色の南国果実を思わせる髪、右目を隠す風に付けられている黒の眼帯、そして身に纏う雰囲気。
六道骸とそっくりな彼女は、しかし彼の幻覚等では無い。
正真正銘の人間だ。
『くろうむ・どくろ』は『ろくどう・むくろ』のアナグラムであり、六道骸が彼女に与えた新たな名前である。
髑髏はボクと同じく精神界で六道骸に出会ったのだ。
円らな瞳は、真っ直ぐ強い意志を主君に向けている。
はっきりとした声をしていた髑髏に、ボクは少しだけ感動した。
凪。それが生まれ変わる前の彼女の名前。
土手でボクと一緒にコロッケを食べた、あの無口な凪だ。
ボクは一度しか会っていないが、孤独だった彼女がこうして仲間に囲まれ、自分から戦場に出向くまで強くなったのは喜ばしい。
「ボス」髑髏は呼ぶと、桜色の唇を主君の頬に押し当てた。
ぼふ、と効果音が付く勢いで主君の顔が赤くなる。
一方、「十代目に何て事を！」と獄寺は怒りに顔を赤らめて髑髏を怒鳴った。
その光景に温かい視線を送っていると、今度はボクの元へ髑髏が近づいて来た。
髑髏は口角を上げてボクを見つめた後、麦チョコを差し出した。
｢これ、お返し。前に麦茶もらったから｣
｢えっ。どうしてそれを｣
｢貴方の正体は聞いたから｣
誰がとは言わなかったが、六道骸以外にいないだろう。
ボクは「ありがとう」とフードの下で笑み、髑髏に触れないよう彼女の手に乗せられた麦チョコを摘まんだ。
ボクには、髑髏の腹部に霧の靄が掛かっているように見える。
マーモンと髑髏が体育館の中央に向かい合って立つ。
チェルベッロの勝負開始の合図と共に、幻術士同士の戦いが始まった。
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ゆきな(プロフ) - これからも無理せずに頑張ってください！ (2019年7月2日 18時) (
レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
シロ(プロフ) - 続編おめでとうございます！いつも楽しみにしております！これからもどうぞ無理をしない程度に頑張って下さい。 (2019年4月27日 13時) (レス) id: 1e9e5f7638 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイチェル | 作成日時：2019年4月27日 10時
