標的16裏 スクアーロという男−２ ページ50
山本視点
鮫が放たれたとチェルベッロの声がして、俺は倒れていたスクアーロに肩を貸す。
「下ろせ」と耳元で呟くスクアーロに、俺は首を横に振った。
スクアーロと敵対してしまったと落ち込む彼女に、「仲直りをしよう」と約束したのだ。
俺がそう言うと、スクアーロは顔を顰めて訝った。
｢俺と、敵対？ 仲直りだとぉ？
どう云う事だ｣
｢俺の大切な友達が前に話してくれたんだ。
スクアーロに一泊させてもらった、箸の使い方を教えてもらった、寝かしつけてくれた、ってさ｣
黙って聞いていたスクアーロの細い目が、ゆっくり見開かれる。
はっと息を呑んだ声の後、「麗羅」と囁いたのが聞こえた。
頷くと、スクアーロが更に驚く。
鮫が近づいて来たが、高さがあるので大丈夫だろう。
俺は話を続けた。
｢彼奴、また顔を見せたがってたぜ。だから、｣
｢顔を……さっき叫んでた声の奴か？｣
俺が言って良いのか言い淀んでいれば、スクアーロは溜息を吐いた。
此方(裏社会)に巻き込みたく無かったんだがなぁ、と。
「箸使えてたか？」
「ああ」
「都会には慣れてたか？」
「多分な」
「幸せそうか？」
「最近は修行で大変そうだけどな」
俺の答えに、スクアーロは苦笑した。
下で泳ぐ鮫が柱に突進して来た。
戦いで脆くなっていたのか、床の一部が崩れて俺とスクアーロは下の階に落ちてしまった。
鮫との距離が一気に縮む。
このままでは不味いと思ったのも束の間、不意にスクアーロに上の階へと蹴り飛ばされた。
柱に叩き付けられる。
下を見ると、スクアーロが笑みを浮かべていた。
｢ガキ、剣の筋は悪くねぇ。
後はその甘さを捨てる事だ｣
｢待てよ、スクアーロ！ お前なんで！｣
｢敵に助けられるなんざ、俺の剣士としての誇りが許さねーんだぁ！｣
声をがなり立てたスクアーロは一度呼吸を置いてから、奴にしては小さめの音量でこう言った。
『良いか、ファルソの武器には気を付けろ』
――ザバッ、と鮫が大きく跳ね、スクアーロを攫って水面下に消えてしまった。
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レイア - 続編楽しみです♪ (2019年1月23日 16時) (
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作者名：レイチェル | 作成日時：2019年1月12日 10時
