【リボーン】純情クワドラングル (ページ35)

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標的12　変えられる－２ページ35

トーマ視点

動かないベルフェゴールを、足元が覚束ない獄寺が見下ろす。

それから、獄寺がベルフェゴールの首に架けてあるハーフボンゴレリングに手を掛けた、その時……突然伸びたベルフェゴールの手が、獄寺のハーフボンゴレを掴んだ。

獄寺が押し倒される。

ダメージが酷い獄寺は、思うように身体が動かせずにベルフェゴールを押し退ける事が出来ない。

獄寺は一気に追い詰められてしまった。

｢リング、リング！ボンゴレリング！｣

｢てめー、往生際が悪ぃぞ！｣

獄寺の怒声はベルフェゴールの耳に届かない。

昔、双子の兄を自らの手に掛けたベルフェゴールは、それ以来、自身の血を見ると我を忘れるのだ。

双子の兄を手に掛けた時の快感から、ベルフェゴールはバーサーカーと化す。

「あはぁ～！」と奇声を発し、一心不乱に獄寺に掴み掛かるベルフェゴール。

マーモンは『負けを認めない王子の本能』だと言ったが、ボクにはベルフェゴールが意識を持っているように見えた。

スピーカーが音声を拾ってくれないが、ベルフェゴールは何かを喋っている。

｢『負けらんねぇ。
王子が姫を連れて帰るんだ』｣

読唇術を使えるリボーンが、ベルフェゴールの言葉を翻訳した。

主君や笹川等、事情を知らない者が首を傾げる。

一方、スクアーロは「彼奴か」と呟く。

隣にいる山本の視線を感じたが、ボクはそれ処では無かった。

ベルフェゴールが、ボクを連れ帰る為に彼処までしている。

だとするならば、一体何故？

今は戦いの途中、しかも血を流してバーサーカーの状態になっている。

それなのに、どうしてベルフェゴールはボクに、『王子と姫』に執着する？

――今晩からの勝負に勝って、指輪と一緒に姫も返してもらうから。

会ったのは、この争奪戦を除けば日本へ行く前日あの日だけ。

それにしてはボクも彼らに情が移っているが、ベルフェゴールのそれは異常だ。

ボクのように、人間が物珍しかった訳でも無い。

獄寺とベルフェゴールの縺れ合いは続く。

二人のチェルベッロは顔を見合わせて、残り一分のカウントダウンを始めた。