【リボーン】純情クワドラングル (ページ29)

今日:10 hit、昨日:17 hit、合計:36,417 hit

標的11　王子様と鮫のお兄ちゃん－２ページ29

麗羅視点

名前を呼ばれて振り返る。

山本君は穏やかな表情に戻っていた。

｢山本君。あたしね、実はヴァリアーの人達と会った事があるの｣

突然のカミングアウトに、山本君は「そうなのか？」と存外普通のリアクションを取った。

また険しい表情にさせてしまうとばかり思っていたあたしは、力が抜けながらも、日本に来る前の出来事を話した。

ベルさんに拉致された事、『姫』と云う渾名の事、ヴァリアーの本拠に泊めてもらった事、箸の使い方を教えてもらった事、ジェット機を出してもらった事。

これだけの話をしたのにも関わらず、山本君が反応を見せたのは、スクアーロさんの部屋で寝かせてもらった事だけで……他の事は、軽く頷いてくれるだけだった。

あたしは最後に、白々しくこう言った。

｢ベルさん達がヴァリアーで、暗殺部隊の幹部だったなんて知らなかったよー。
でもね、スクアーロさんを商店街で見た時、何と無く悟っちゃったんだ。
あの人達と戦わなきゃいけないんだなーって｣

戦う事処か、その先の事も知っている。

だけど、ベルさん達と戦わなきゃいけないのは嫌だって、もっと楽しい再会が良かったって思っているのは事実だ。

あたしはどうしても、あの人達を敵だと割り切る事が出来ない。

「そっか」山本君は呟くと、ぐしゃぐしゃとあたしの頭を撫でた。

｢ツナに襲い掛かるし、小僧に聞いた話だと凄ぇ悪い奴らみたいな感じだったけど、ヴァリアーも好い奴らなのかもしんねーな｣

｢うん。スクアーロさんは何だか、お兄ちゃんって感じの人だったよ｣

｢スクアーロが兄ちゃん？
想像出来ねーなぁ｣

それでも想像したのか、山本君が苦笑を浮かべた。

しかし、山本君はすぐに真剣な顔付きになった。

力強く拳を握り締める山本君の頭の中にはきっと、『打倒スクアーロ』の文字があるのだろう。

一見のほほんとして見えるけど、誰よりも負けず嫌いなのが山本君だ。

敵だと割り切れないとは言ったが、あたしだって絶対に負けたくない。

絶対に負けられない。

昨日、あたしの対戦相手を見て、改めてそう思えた。