標的62 影武者−１ ページ8
麗羅視点
右手に包帯を巻いてくれたビアンキに、「ありがとう」と軽く会釈をした。
山本はボクの右手の怪我を相当気にしているようで、何度も謝って来る。
ボクが勝手に怪我をしただけだから気にしないで良いのだと、八の字に曲げられた眉と眉の間を左手の人差し指で軽く突いた。
｢アイツ、お前から『六道骸の血の臭いがする』つってたな。
どう云う事だ？｣
やはりと言うか、山本の肩に乗っていたリボーンに尋ねられる。
元々隠すつもりは無かったのだ。
ボクは素直に、雲雀と戦って気絶した時に精神界と云う場所で血の付いた包帯を強引に手渡されたのだ、と説明した。
その証拠である、乾いた黒い血がべったりと付いた包帯を見せる。
何故それを言わなかったのか。
リボーンからの疑問を感じ取り、言われる前に「名前を訊き忘れたんだ」と言い訳をした。
先刻も述べた通り、ボクはこの事を隠しておくつもりは無かった。
むしろ幻覚を使える事等、積極的に教えたかった。
しかしボクは、自分は名乗っておいて名前を訊いていなかった。
教えた事をリボーン達から六道骸へ漏れる事を危惧し、遣る瀬無い気持ちで黙っていたが……六道骸は最初からボクを疑っているようだったので、教えてもそれ程問題は無かっただろう。
今になって後悔した。
事のあらましを聞いたリボーンは、懐から一枚の写真を取り出した。
その写真には、三人の男が映っている。
リボーンは真ん中の男を指差した。
｢精神界で会った男はコイツだったか？｣
｢違う。ボクの精神界に現れた奴は、赤と青のオッドアイだった。
それに、髪は紫色の南国果実だった｣
｢紫色の南国果実って、どんな髪だよ！？｣
主君が声を大にしてツッコミを入れる。
しかしながら、あの珍妙な髪形を端的に説明するには これしか無い。
頭の上に付いていたのは、どう見たってやる気の無い房だった。
む、と口を結んでリボーンが考える。
「コイツは影武者か」写真の真ん中にいる、逆立った黒髪に鋭い目付きをした男を見つめながら呟いた。
主君達は、リボーンがボクの証言から判明した事を呟いたように思えただろう。
けれどもボクは、それは違うと察する。
リボーンは唯呟いたのでは無く、未来を知っているボクに確認したのだ。
「コイツは影武者か？」と。
ボクも呟くように「だろうな」と返す。
リボーンが「そうか」とまた呟いた。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年10月19日 17時
