【リボーン】並盛に舞い降りる白雪Ⅴ (ページ22)

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標的56　煙草とライターページ22

麗羅視点

「失礼します」がらがら、と保健室の扉を開ける。

しかし其処にはシャマル先生の姿は無くて、あたしは肩を落として項垂れた。

雲雀先輩の項にあった蚊に刺され跡は、シャマル先生の三又矛の蚊だ。

あたし達と話す前、雲雀先輩は学校で女子生徒をナンパするシャマル先生にトンファーを振るったのだ。

元々は殺し屋であるシャマル先生は、その時反射的に雲雀先輩へ三又矛の蚊を放ったと云う事になっている。

シャマル先生を止めるか、解毒剤をもらって雲雀先輩と一緒に敵陣へ乗り込もうと思っていたが、何方も失敗に終わってしまった。

《平和主義なのは結構だが、あまり『物語』に逆らう事はするなよ。
此方の勝利で終焉なんだ。
変な事をして覆りでもしたら大変だぞ》

(そうだね。でも、何もしないでなんていられない)

きっぱり言うと、ローシさんの「そうか」と云う呆れた声が返って来た。

保健室を出ようとした時、窓の外に煙を見た。

不審に思って窓辺に移動し、窓を開けて外を見回す。

すると、火の付いた煙草を吹かしている獄寺君を見つけた。

｢獄寺君、煙草吸っちゃ駄目だよー｣

窓に身を乗り出し、獄寺君へ注意を呼び掛ける。

獄寺君ははっと振り返り、あたしの名を呼んだ。

つい数秒前まで太々しくしていたのが一遍、青い顔をして此方に駆け寄って来た。

｢すみません！麗羅さんに副流煙をさせてしまって｣

｢そうじゃなくてー。中学生なのに煙草したら、身体に悪いんだよ｣

一瞬きょとん顔になった獄寺君は、次には歓喜で泣き出しそうな顔になった。

｢俺の心配をして下さったんすね！？
ありがたき幸せっす！｣

｢そうだよ。だから、煙草は禁止ね｣

獄寺君は素直に煙草を携帯用灰皿に仕舞うが、顔は途轍も無く渋っている。

ダイナマイトを素早く点火するのに煙草の火が必要なのは分かるが、それとこれとは話が別である。

今はダイナマイトの点火が目的では無かった。

手を獄寺君の前に差し出す。

すると首を傾げた獄寺君に手を握られてしまった。

｢煙草とライターだよー。
獄寺君が喫煙しないように｣

「其方すか」獄寺君は残念そうに目を伏せながらも、大人しく煙草とライターを預けてくれた。