標的３ 未来の日記帳−１ ページ5
麗羅視点
｢お前には雪の波動が流れている。ボンゴレリング、マーレリング、おしゃぶり……仮に『雪シリーズ』とするが、雪シリーズは雪の波動を持っている者で無ければ、管理する事が出来ないんだ｣
｢なら、その雪の波動って云うのを持ってる他の人に管理してもらえば……｣
｢それが、雪の波動を持っているのはお前だけなんだ｣
｢其処を何とか！｣
｢オレに言われてもな｣
縋るようにローシさんを見るも、見捨てられてしまった。
この状況で抗議するなら、確実にローシさんしかいないだろうに。
肩を落としてもう一度見てみるも、諦めろと言わんばかりに見下ろされ、あたしは頭を抱える。
田舎者になんて事を頼むんだ、あたしは幻覚が効かない変な能力しかないぞ、と。
｢変な能力では無い。
『幻覚破壊(ファンタズマ・ディストルツィオーネ)』と云う、列記とした名前のある能力だ｣
｢ふぁん……？｣
初めて聞く無駄に長い技名に、あたしは首を傾げた。
｢幻覚を透視、無効化する能力の事だ。
これは生まれつきの能力で、裏社会では非常に警戒されている。
それもそうだろう、有幻覚すら効かないのだからな。
幻術士からすれば、幻覚破壊を持つ人間は天敵だろうな｣
｢ちょっと待って下さいよ。
知らない単語ばっかり止めて下さい｣
｢裏社会と云うのは、マフィアの……｣
｢あーあー！ それは知ってます！
そして聞きたくありません！｣
あたしは耳を塞いだ。
あたしが聞きたかったのは『有幻覚』や『幻術士』と云う言葉の意味であって、物騒な事柄の説明では無い。
｢って、あたしは裏社会には関わりませんよ。他を当たって下さい。
あたしは此処で平和に暮らすんです｣
｢お前が引き受けてくれないと、世界の均衡が保てなくなる｣
｢腹が空いたアナグマみたいな目で見てもダメです｣
｢そうか。この世界はお前の我儘によって滅びの運命を辿るのか｣
頭を抱え、ローシさんは両膝を付いた。
震えた声で、絶望した顔を浮かべながら。
其処までされると、あたしは全く悪く無い筈なのに罪悪感が湧く。
あたしのせいで世界が滅んだ、と言われそうで怖い。
渋々頷くと、項垂れていたのが一遍、ローシさんは笑みを浮かべた。
｢よし、じゃあオレは帰る｣
｢帰らないで下さい｣
立ち去ろうとしたローシさんの服を摘まんで止めた。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年3月14日 14時
