標的６ 王子様と拉致ー１ ページ19
麗羅視点
(どうして嫌いなんて言っちゃったかなぁ)
深く長い溜息を吐きながら、トボトボと生まれて初めてのイタリアの街を歩く。
電気とか、自動車とか。見た事の無い物が、沢山並んでいる。
しかし、マフィアが栄えている国の為に、夕日が沈み掛けているこの時間帯、人は少なかった。
そんな中、身長百四十センチのあたしが出歩くのは、やや危険な気がする。
泊まる場所を探さなければ。
そう思うけれど、今のあたしは風に当たりたい気分なのだ。
(フラン君、ちゃんとご飯食べてるかな。
一緒に、またいっぱい遊びたいな)
《過ぎた事を考えても仕方が無いぞ。
まあ、オレが言える立場では無いが》
(そ、そうだよね。嫌いって言っちゃったし、言われちゃったし。
兎に角、今は日本に行く方法を考えないと)
握り締めた自分の拳を見ながら歩いていたら、誰かとぶつかってしまった。
ぶつかった相手を見てみると、個性的な見た目に思わず目が丸くなる。
「王子、様？」。相手を見て、あたしは思わず呟いてしまった。
ぶつかった青年、いや少年(？)は、金色の髪に銀色のティアラを乗せていて、まるで王子様のように 輝いていたのだ。
けれど、何故かか目が前髪で隠れている為に、顔はよく見えない。
そんなに前髪が長くて、ちゃんと前は見えているのだろうか。
なんて疑問を覚えたあたしは つい謝る事を忘れ、首を傾げてしまう。
睨まれたような気がして我に返り、慌てて頭を下げた。
｢ぶつかってしまって、すみませんでした！｣
｢ん。別に良いけど。それよりお前、さっき何つった？｣
｢えーっと、王子様？｣
｢しししっ。お前、チビの癖によく分かってんじゃん｣
変わった笑い方をした王子様は、あたしの頭をガシガシと勢い良く撫でて来た。
髪が乱れる。会って数秒の人間に対して、なんて事をしてくれるのだ。
撫でられないように一歩後ろに下がり、髪を整えながら王子様を睨む。
しかし、小さいあたしと、割と背が高めな王子様。
どう頑張って対抗しても、どうしても、あたしが見上げる形になってしまう。
小さい癖に威嚇するあたしが面白いのか、何なのか。
王子様はまた「ししし」とチェシャ猫のような変わった笑みを浮かべ、あたしに手を伸ばした。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年3月14日 14時
