標的５ 行き違いすれ違い−１ ページ13
麗羅視点
｢もー。麗羅ってば、何処まで行っちゃったんですか｣
淋しそうに呟く、フラン君の後ろ姿を捉えた。
その声に、何時もなら「どうしたの」と駆け寄るのだけれど、今はどうしても一歩を踏み出せないでいた。
振り返ったフラン君と目が合った。
フラン君が此方に走って来る。
｢何時までも戻って来ませんでしたけど、まさか、迷子になってたとかじゃ無いですよねー？
ほーんと、麗羅には世話が焼けますー｣
何とも無いような調子でフラン君は言った。
けれど、あたしには分かってしまうのだ。
フラン君が、本当はとても安堵している事。
そして、これからそのフラン君を、あたしは傷付けるのだ。
あたしが何も言わない事を心配に思ったのか、フラン君は両手で林檎帽を抑えながら、「どうしたんですか」と顔を覗き込んだ。
「変な物でも食べましたか」と。
｢ううん。違うの、フラン君。
あたし、あたしね、一人で山を下りようと思う｣
フラン君の目が見開かれた。
どうしてですか。そう、エメラルドグリーンの目が訴えている。
上手い言葉が見つからなくて言い淀むあたしの手を、フラン君の手がぎゅっと包み込む。
｢一人で、って。どうしてですかー？
ミー、麗羅に何かしましたかー？｣
｢え、いきなりどうしたの？｣
｢ミーが何かしたから、麗羅は一人で行こうと思ったんでしょー？
今回だけは、特別に直してやっても良いですよ｣
｢違うよ。フラン君は何もしてない、｣
｢じゃあ、どうして一人で山を下りるなんて言うんですか！
雪を探しに行って、どうしちゃったんですか！？｣
フラン君が声を荒立てた。
フラン君の顔が歪められる。
明白に怒りを見せるフラン君は滅多に見ないから、驚き竦み上がってしまう。
びくりと方が揺れた。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年3月14日 14時
