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お昼ごはんを食べたら、必ず睡魔が襲ってくる。
不自然なほど強烈な眠気に抗えず瞼を閉じ、次目覚める頃には日は沈んでしまっているから、私はこの家に来てから昼と夜の境目を見ることがなくなった。
きっと睡眠薬か何かなのだろう。
お昼ごはん、それから夜眠る前に飲む尚大くん特製の甘いホットミルク。この2つに尚大くん何か細工をしているのだと、私は気がついていた。
だけど、別に嫌じゃない。
前に具合が悪くてお昼ごはんを残した日、睡眠薬の量が足りなかったのか、私は中途半端な時間に目を覚ましてしまったことがある。
身体が妙に気怠い午後五時、窓の外は真っ赤に燃えていた。
目覚めてすぐ、尚大くんがいないことに気がついた私は、重たい身体を引きずりながら彼を探した。
広くない部屋に尚大くんがいないのは瞭然だった。
この部屋に一人でいるのが怖くて、尚大くんの言いつけを破って、勝手に他の部屋を覗いたりもした。
だけどどこにも、尚大くんはいなかった。
真っ赤な夕日がどんどん部屋を侵食していく。
私は朦朧とした意識でその光景を眺めていた。
尚大くんがいない。そんな世界なら起きていても意味がない。
もう一度、眠るように瞼を閉じる。
曖昧だった意識を手放すと、次目覚める頃にはいつものように彼は私の頭を撫でてくれていた。
「尚大くん…」
「おはよう。不安そうな顔して、どうしたの？」
「夢を見たの。尚大くんがいなくなっちゃう夢…」
そう、これは夢。
尚大くんと過ごす今こそ現実で、あの燃ゆる太陽こそが夢なのだ。
もしもそれが逆だというのなら、私は永遠に眠りについて、夢を見続けていた方が幸せだ。
こんなにこわい思いをするくらいなら、尚大くんに眠らされていた方がマシなのだ。
彼がこの部屋に、私の傍にいない時間など必要ない。
私は起きている時も眠っている時でさえも、生きている時間はすべて、尚大くんに管理されていたい。
だから色んなことに気づかないフリをする。
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作者名：ベルカ | 作成日時：2023年3月21日 0時
