12月、プールサイドに浮かぶ死体［Nao.O］ (ページ7)

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「ねえA、俺疲れちゃった。もう休憩にしない？」

「まだ30分しかやってないよ？」

「だって勉強嫌いなんだもん。ギブ、俺ちょっとだけ寝る」

「しょうがないなぁ」

普段私の前で眠ることもご飯を食べることもない尚大くんが勉強のときだけはこうして寝顔を見せてくれるから、私は昔よりますます勉強の時間が好きになった。

尚大くんの寝顔はとても穏やかで、かわいい。
目蓋が閉じられるせいで宇宙みたいな真っ黒の瞳が見れないのは残念だけど、無防備になる口元や艶のあるまつ毛を眺めるのは楽しかった。

私が勉強しても何にもならない。

将来がある子どもたちが学校に行って、色んな勉強をしているけど、私には将来も何もないから勉強しても意味がないという。昔、母親に言われた。

私はきっと、12月のプールサイドに浮かぶ鳥の死体のような存在なのだと思う。

冬休みの学校、ましてや役目を終えたプールになんて誰も近づかないし、そんな場所に浮かぶ小さな死体になんて誰も気がつかない。

冷たい、濁った水に浮かんで、朽ち果てていく。

夏前、清掃員に嫌な顔をされながらごみ袋に放り込まれ、人知れず燃やされてなくなる存在。健全に生きる子どもたちには知られることなくこの世からいなくなる。

尚大くんは、そんな私に気づいてくれた。
彼だけが、暗闇で生きる私の太陽なんだ。

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