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「せっかくだし、今日の夜ご飯は角のお肉屋さんのコロッケにしようか」
「うん！」
私たちの家に帰る途中、公園から赤い自販機を目指して歩いていると突き当たりの角に小さな精肉店がある。
私たちはそのお店を、角のお肉屋さんと呼んでいた。
「コロッケ4つください」
「はいよ。あれ？山田さん、今日は女の子と一緒かい？可愛い子じゃないか」
お肉屋の大将に声をかけられ、私は尚大くんの背中に隠れて縮こまる。
尚大くんがニコニコと笑顔で話しているからきっとこの人は悪いひとじゃないんだろうけど、尚大くん以外の人間は信用していいのか分からない。
「そうなんですよ、俺の妹でー」
「…どうも」
「山田さんと違って人見知りかい？顔は似てるのにねー」
「まあそんなところも可愛いんですけどねー」
嘘だと思った。
私が尚大くんの妹だということも、尚大くんがこの大将には山田だと名乗っていることも。
だけど、私は何も言わなかった。
私が少しでも間違えば、尚大くんは鼻を噛んだティッシュよりも簡単に私を捨ててしまうだろう。
私にはそれが怖い。
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作者名：ベルカ | 作成日時：2023年3月21日 0時
