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この世の絶望をすべてかき集めて凝縮したような哀しみが宿っている。
尚大くんの瞳は、私が今まで見てきたどんな闇より深くて綺麗だから好き。
「ご飯出来たよ」
「はーい」
夢中になって眺めていた尚大くんの写真をアルバムに戻し食卓に向かうと、テーブルにはネコのお絵描きつきのオムライスが並んでいた。
「わーい、尚大くんの作るオムライス大好き！」
「どうぞ召し上がれ」
オムライスはひとつだけ。
いつもそうだ。私がご飯を食べている時、彼はコーヒーを啜りながら私を眺めているだけで、自分は何も食べない。
物を食べているところを誰かに見られるなんて、そんな経験ないから少しだけ恥ずかしいけれど、ちょっとずつ慣れてきたところだ。
尚大くんの家に来てから、3ヶ月が経った。
あの後、母親と父親がどうなったのかは、知らない。
父親の血から蛆が湧いて、母親の死体が腐って床に落ちるところを想像するとゾッとするけれど、私があの二人を見ることは二度とないような気がしている。
どちらにしろ私はあの家がどこにあったのかも、帰り方も分からないのだ。帰りたいとも、思わない。
「どうしたの？」
「…えっ？」
「暗い顔してる。嫌なことでも思い出した？」
「ううん、お腹いっぱいでぼーっとしちゃった」
「そっか。昨日出かけたから、疲れてるのかもね。
少し眠ったら？」
「そうする」
眠たいと。私がそう言えば、尚大くんは一緒にベッドに入り、私が眠りにつくまで優しく頭を撫でてくれる。
そんなこと誰にもされたことがなかったから、尚大くんに出会った最初の夜は、とてもびっくりしたけど、今では尚大くんの手の温かさを感じないと眠れる自信がない。
私が眠りにつくその瞬間まで傍にいて、私が目覚める時もこの部屋にいてくれる。まるで夢のような毎日。
ここが天国だと言われても驚かないし、そうでないなら尚大くんは神さまか何かなのだと思う。
彼のいるこの部屋だけが、私の安全地帯なのだ。
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作者名：ベルカ | 作成日時：2023年3月21日 0時
