歌い手とシェアハウスと秘密...3 (ページ18)

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第116話:可能性と覚悟ページ18

通常､あの怪我の具合や環境から考えるに､低体温症や傷の化膿なとは起こりうる
でも､明らかにそれらとは関係の無い症状が､愛希ちゃんからは見られた
もし､可能性として､愛希ちゃんが何か…身体に抱えていたら?
そう考えると､いくつか思いたあたる節があった｡
天月の家でコラボした時の顔色の悪さ｡
愛希ちゃんが倒れて､愛希の家まで運んだ事｡
色々な思い当たることが今になって､思い出されていく｡
不安になった俺は､愛希ちゃんへ目をやる｡
痛々しい傷をそこらじゅうにつけた小さな身体｡
そっと手を握ってやると､それは驚く程に冷たくて｡
思わず僕は､1人呟いた｡
坂)「なぁ…愛希ちゃん｡」
そんな小さな身体で､1人で何を隠して…背負ってるん?
言葉にできないその疑問に答える声はなかった｡
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天月side
僕と美希は､病院で待機していた｡
浦さんから連絡があった直後､背後から聞こえた坂田たちの声で､全てを悟っていた｡
発作を起こしたのだ｡と｡
だから､最悪の想定も考えた上で､病院に来た｡
現在､病院に運ばれた愛希は､意識がなく担当医による診断と処置が行われている｡
不安と恐怖で身体が震えるのを誤魔化すように､唇を噛む
ふと､隣を見ると美希の手が小刻みに震えているのが見えた｡
天)「美希…」
大丈夫だよ｡
続けて言いかけた言葉を僕は､慌てて飲み込む｡
あまりにもその言葉が無責任であることに気がついたから｡
じゃあ､なんて言葉をかければ良い?
分からない｡
こういう時､かけられる言葉は限られる
でもどんな言葉も､今の僕らには安っぽい…根拠の無いペラペラの希望にしか感じない｡
かける言葉は､ない｡
重苦しい静寂が僕らを支配する｡
何か言わなくちゃ｡言わないと…!
僕がこの空気に耐えかねて､再び口を開けた…刹那､微かな音が聞こえた｡
«ガチャ»
顔を上げると､担当医の医師が診察室から出てきたようだった｡
美)「先生!姉さんは…?」
(先)「手は尽くしましたが…後は､本人の力次第としか｡」
不安そうに問うた美希の言葉を､担当医は残酷な事実を告げた｡
その言葉に､僕も美希も頭が真っ白になる
美)「そんなっ…!」
(先)「怪我の酷さに加え､病もかなりのスピードで進行しています､…ご覚悟を｡」
つまり､もう愛希を救うためには愛希の生命力次第ってこと?
«ガタッ»
僕が担当医の言葉を飲み込んだ直後､背後から何かが落ちる音がした｡