百五十歩目。 ページ1
―Aside―
気付いたら自分の部屋に居た。
ここ数日の記憶が曖昧だ。今日どうやって帰って来たのかなんて全く覚えてない。
ただ、未来さんの葬式に参加したことは覚えてる。
薫子さんたちが中心になって進めてくれて、私もそれを手伝っていた気がする。
その間は寮じゃなくて薫子さんたちと同じ所で寝泊まりしてた。
たくさんのヒーローに会った。知らない人もたくさんいた。梅雨ちゃんたちも来てくれてた。
心配と同情の目がずっと向けられてた。
「大丈夫？」と聞かれて、『大丈夫です』と笑って答える以外の選択肢はあったのだろうか。
どっちにしろ困らせるだけなのに。
不思議と涙は出なかった。薫子さんが目の周りを赤く腫らしていたのが痛々しかった。
それでも、笑ってた。
未来さんは元気で笑顔の人が好きだから。最後に笑っていろと言ったから。
チャリ、
『...もう、入んないな』
ずっと、肌身離さず持ち歩いているペンダント。
いわゆる、遺骨ペンダントと呼ばれるもの。
お父さんとお母さんのが入っていたところに、未来さんのが加わった。
ほんの少しずつしかいれていなかったのに、溢れてしまいそうなくらい納まってしまった。
三人分ならそりゃそうか。
もしこれが壊れたりしても、また詰め替えるんだろう。
お父さんと未来さんのは骨壺にそれぞれ納めている。
お母さんはあの日小指しか残らなかったから大事に大事に取ってある。
タルタロスで死んだ"脳無"はお母さんのDNAと一致した。でも、それを持ち帰る勇気はなかった。
お父さんは病気で死んだ。
お母さんはヴィランの"個性"で死んだ。
未来さんはヴィランとの戦いで死んだ。
もう会えない。死んだ人は遠くに行くから会いに行けない。
そう教えてくれたのはお母さんだ。
三人は優しい。
私の為を思ってお父さんとお母さんは"個性"を持っていることを黙ってくれていた。
私の"個性"を知っていたから、未来さんは私を引き取ってくれた。
知っていてなお、何も知らない私に"個性"を譲る「承諾」をした。
今思えば、私が他者の"個性"を欲しがっていたのは【譲受】の影響なんだろう。
【遮断】
【過去視】
【予知】
３つとも、発動条件がそろってしまった。
未来さんの過去を視て、壊理ちゃんのことを知った。
ホークスに教えて貰ったのも嘘じゃない。
公安は雄英に【譲受】の存在を隠した。
対等関係はとっくに崩れた。
未来さんに守られていた私はどうなるんだろう。
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月30日 22時
