百十八歩目。 ページ19
―心操side―
『おぉ...！』
「なに、どうした？」
『心操くんが"俺も"って言った』
「？ うん、言ったな」
『両想いだ。付き合う？』
「は？？」
何言ってんだ。「付き合う？」じゃねぇよ、意味分かって言ってるのか？？
Aが他の人に好きとか言ってるの聞いたことないし、彼氏もいたことはない。
というか恋愛事に疎いのも知ってる。中学の時も同級のカップル見て「あの二人仲良いいよね」で済ませてたし。
告白...はされてたな。フり方が酷すぎて俺でも引いた。
付き合ってくださいって言われて「なんで？」って返すし、好きだからって言われて「私は別にきみのこと好きじゃないよ」って返す。悪気が無いのがタチ悪いんだよな。
はっきり断るから余計な心配はしなくてよかったけど。
だから「付き合う＝恋人になる」ってのはAも分かってるはず。冗談でそんなこと言うやつじゃない。
じゃあ、まさか本気で言ってるのか。
「A、ちょっと座って」
『？ うん』
Aを布団の上に座らせて俺も向き合うように座る。
寝起きだから髪ぼさぼさだしパジャマだし、でかける約束破ったしで全く格好つかない。
今までも何度か告白しようと思った。無茶をするAを引き留めたかったから。
思い違いで後から傷付くのも、Aを悲しませるのも嫌だからちゃんと言わないと。
「...俺はAが好きだよ。付き合って恋人になりたい。おでかけじゃなくてデートって言いたいし恋人らしいこともしたい。Aは俺と"親友"じゃなくなってもいいの？」
これが勘違いで"親友"でいたいって言われたら、俺は頷くしかないしAは今まで通りに接してくれるんだろう。
どうやったって俺は勝手に傷付いて引きずる。今まで散々この関係に甘えてきたくせに。
Aから目を逸らさないようにしてるから、俺の不安とか緊張とかもAは多分気付いてる。
不思議そうな顔で何度か瞬きをした後、Aは笑った。すごく嬉しそうに。
『私も心操くんが好きだよ。恋人がどんなものなのかはよく分かんないけど、心操くんが相手なら嫌なことないと思う。それに、心操くんと一緒にいれるなら"親友"でも"恋人"でもなんでもいいよ』
とんでもない口説き文句に心臓が早くなった。
顔、熱い。Aが平然としてるの悔しいな。
きっと初めて会った時から惹かれてた。
一緒にいたいのは俺も同じだ。
「.....A、好きだよ」
『うん、私も好き〜！』
「俺の恋人になって」
『よろこんで！』
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月6日 22時
