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葛藤 ページ31

「おーい、」


平次がヒラヒラと手を振って見せる。


「見えてまっかー?Aはーん?」


部屋に着くや否や、離された手。


いつもであれば迷わず飛び込むベッドの上が特等席のはずが。


Aは部屋のドア前から微動だにしない。


「なぁ、いつまでそこおるん」


「……あかんねん、冷静なろ思たら思うほど、訳分からへんくなってもうて、…頭パーン」


「そんな軽い頭爆発したところで何も飛び散らんから安心し」


「…………」


「お、言い返さへんのか、余っ程やな」


いつもはすぐに聞こえる反論の言葉も、今日は無し。


さすがの平次も頭を抱えた。


「…あんな、別に関係が変わったからってそんなすぐに、…その、…何や、…する必要あらへんやろ」


しどろもどろになりながらも言葉を紡ぐ。


「…せぇへんの?」


顔を真っ赤に染めたAが尋ねた。


恋人のそんな表情を見せられて、耐えられる男がいるものだろうか。


一瞬言葉に詰まるも、静かに口を開く。


「…せぇへん、…今日はせぇへんから。…約束」


「やく、そく」


「せや。約束。…やから早よこっち来ぃや」


「…………」


向けられるのはジト目。


そんなに信用されていないのか。


「こんなんやったら依頼の話すら出来ひんやん」


平次が不意に零した。


「依頼?」


「何や俺ら二人に、言うて封筒入っとってん」


「見して」


食い気味に聞こえた返事、彼女の姿はドア前から消えている。


「封筒、見して」


「うお、?!」


至近距離で視線が交わった。


いつの間に真横に来たのだろう。


「何で早よ言うてくれへんの、さっさと依頼、片付けなあかんやん」


「さっきまでお前がグズっとるからやなぁ、」


「そんなんしてへんもん、早よ、封筒、」


「切り替え早」


仕方なく封筒を差し出せばAの瞳は輝き始める。


新しい玩具を与えられた子供のような表情。


「…しゃーない奴やな」


文句の一つでも、そんな気は一瞬で失せたらしい。


平次は溜息混じりに小さく零し、彼女の手元を覗き込むのだった。

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- 物語読みました。 続きが気になります。 更新待ってますね。 (2023年4月11日 0時) (レス) id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)
- 何度も続けてのコメントですみません。。。 またNGワードに引っかかってしまったので○表記にさせていただきました。 (2023年4月11日 0時) (レス) id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)
- ままたまた続けてのコメントですみません。。。 2枚のチケットのここの台詞 「 ○○−○−に困ってます、助けてください、を身代わりになって秒○する女嫌やわ」 ここの、助けてください、の後って何か入るのでしょうか? (2023年4月11日 0時) (レス) @page32 id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)
- また続けてのコメントですみません。。。 NGワードに引っかかってしまったので○にさせていただきました。 すみません。。。 (2023年4月11日 0時) (レス) id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)
- また続けてのコメントですみません。。。 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 平和とはのここの台詞 「警察呼んだらこの女○すで!ええから大人しい言うこと聞け!」 これ正しくはええから大人しくではないんでしょうか? (2023年4月11日 0時) (レス) @page28 id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Rei | 作成日時:2020年3月19日 3時

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