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35-赤豚 ページ35

彼、否、彼女は振り回されているだけだった。自分のために生きる事が許されない生き方をしてきた。
身体を労ってくれた指は力強いが細かった。担いだ身体は軽かった。真実を語る声は耳を疑うほどに高く聞こえた。それの全てに合点がいった。

「それで、辞めてどうするんや」
「旅にでも出ようかと。傭兵として雇ってくれる所を捜して、雇ってくれたら有り難いですね」

乾いた笑いと共に、バグローヴィは答えた。家には帰らないと決めていたらしい。

「旅に出て、思い人を捜します」

思い人。まさか彼女の口からその言葉が出るとは。……ん?

「……なんか、特徴とかあるん?」
「正直、五歳にも満たない頃に一度だけ会ったので、ぼんやりとしか覚えていないのですが、合い言葉なら覚えています。合い言葉さえ伝えられれば、」
「合い言葉?」
「“あなたの目と髪は自分と反対だね”」

この言葉の続きを知っている相手を捜しているのです、と、はにかみながら答える。失意の渦中でありながらも、自害も自傷行為も無かったのは、おそらくこの合い言葉があったからか?そんで、僕はその合い言葉が、妙に頭に引っ掛かった。

「話してくれてありがとう。今日はもう休み。神、バグローヴィの事、ちょっと任せてもえぇか?」
「いいよ。Aちゃん、ちゃんと食べられたね。それから、ちゃんと話してくれてありがとう」
「ですが、今から」
「はい、医務室では俺の発言が絶対だからAちゃんはお休み〜。トントン、あと任せた」

抵抗を見せるもしんぺい神の前では無駄でしかないから、諦めてベッドに横になるバグローヴィを確認して医務室を後にする。書記長室に向う途中、引っ掛かった合い言葉を幾度も脳内で反芻して、ようやく思い出した。

「…………あの子や」

間違いない。あの、一度だけ会ったあの女の子だ。赤が嫌いだと言っていた、あの子だ。

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紅鴇ベニトキ@pc垢 - ミツユキさん» 誕生日プレゼントとしてもう一話更新しました!大きく動いた回(?)となっております! (2020年7月6日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
ミツユキ - 更新ありがとうございます。私の、最高の誕生日プレゼントになりました! (2020年7月6日 18時) (レス) id: c04652f79c (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ベニトキ@pc垢 - わぎゃあコメントありがとうございます!!コメント嬉しすぎて語彙力追い付かないです。現時点が今作一番の山場ですが、しっかりとハッピーエンドに向いますので!それまでもう暫くお付き合いくださいませ! (2020年7月5日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
- コメント失礼致します。とても丁寧に作り込まれたお話で、私の語彙力ではこのお話の素晴らしさを言い表すことが出来ません…!軍パロ作品の中でも特に繊細に作られたお話だと感じました。これからも素敵なお話を楽しみにしています!長文失礼致しました。 (2020年7月4日 17時) (レス) id: 7cbe04ba0e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅鴇ベニトキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年2月17日 16時

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