19-赤蜘蛛 ページ19
休日のひそかな楽しみ。それは、絵を描くことだった。美しいと思ったものを記憶の中に留めておくには限界がある。と言っても下手の横好きというやつで。スケッチブックに鉛筆で下描きして、数本の色鉛筆で色彩を映していく。今朝降りた城下町で水彩絵の具もやっと購入できたし、今度の休みは水彩で着色したい。いやでもその前に水彩画を勉強した方が良いな……参ったな、次の休みに教本を買いに行くことが先だ。
「まぁまぁだな」
木陰に腰掛け、見える風景に重ねるようにスケッチブックを掲げる。うん、心なしか腕も上がってきた気がする。色鉛筆も色幅が増えたし、より写実的に描けるのではないだろうか。
「……ん？」
「わふっ」
白い……狼犬が居た。真横に。待て、今まで横には誰も居なかったはず……それにこの要塞内で狼犬と言えば、一体しか記憶にない。
「これ、この畑？」
「騎兵軍司令官！すみません、勝手に」
「荒らした訳でもないし、バグローヴィの座っている所は畑の外だから気にしないで」
同じように白い軍服を纏った騎兵部隊司令官が追い掛けてくるとも思わなかった。慌てて起立して敬礼しようとすれば座ってて座っててと促され、隣に何故か騎兵軍司令官が座り、スケッチブックを覗き込んでくる。まだ完成しているものでもないし、下手の横好きで描いているからあまり見ないで欲しいが、描いている場所が場所なので言葉を全て飲み込んだ。
「イフリートが珍しく勝手に走ってったから、何事かと思ったよ」
「お騒がせしました……」
「ううん。咎めてるんじゃなくて、バグローヴィだったから」
おそらく、観光客か内部ゲバルトのどちかと思ったのだろう。杞憂でよかった。
「バグローヴィって手小さいね。ほら」
「わ、騎兵軍司令官の手、大きいですね」
唐突に発せられた言葉と、差し出される掌。促され重ねると確かに自分の手は小さい。ちゃんと剣も銃も握れるんだがな。
「あのさ、騎兵軍司令官っていうの長いから、ひとらんからんらんでいいよ。俺もバグローヴィって呼んでるし」
「いや、幹部の方をそんな呼称では」
「じゃあ、幹部の命令ってことで。バグローヴィも硬いなぁ……ミドルネームなんだっけ？」
「グラナートです」
ファーストネームは聞かれなかったのでいいか。頑なに断り続けたが、幹部命令なら仕方ない。
「じゃあはい、呼んで？」
「ひっ、ひとらん様で！」
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紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ＠pc垢 - ミツユキさん» 誕生日プレゼントとしてもう一話更新しました！大きく動いた回(?)となっております！ (2020年7月6日 22時) (
レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
ミツユキ - 更新ありがとうございます。私の、最高の誕生日プレゼントになりました！ (2020年7月6日 18時) (レス) id: c04652f79c (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ＠pc垢 - わぎゃあコメントありがとうございます!!コメント嬉しすぎて語彙力追い付かないです。現時点が今作一番の山場ですが、しっかりとハッピーエンドに向いますので！それまでもう暫くお付き合いくださいませ！ (2020年7月5日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
碧 - コメント失礼致します。とても丁寧に作り込まれたお話で、私の語彙力ではこのお話の素晴らしさを言い表すことが出来ません…！軍パロ作品の中でも特に繊細に作られたお話だと感じました。これからも素敵なお話を楽しみにしています！長文失礼致しました。 (2020年7月4日 17時) (レス) id: 7cbe04ba0e (このIDを非表示/違反報告)
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