12-深緑狐 ページ12
「だから、ひとらんが持って来たんやな」
「まずかった？何か話とかあったんならインカム使う？」
「いや、急ぎや無いし」
「警邏部隊司令官、A・グラナート・バグローヴィです。失礼致します」
三回のノックと定型文的入室に、崩れかけた表情を引き締める。相も変わらずシャツのボタンを一番上まで締めて、目深に軍帽を被った警邏部隊の司令官。呼ばれた原因を探らんとする切れ長の黒目と対象的な引き結ばれた薄い唇。
「よく来たな。まぁ座ってくれ」
「いえ、用件を伺ったら職務に戻ります」
「じゃあ端的に聞くな。なんでいつも帽子被っている？」
普通なら気にしないが、彼の髪型には元々違和感があった。短髪と呼ぶに呼べない丸い後頭部と、一方方向に集まっているように見える線。気になるめう！
「軍帽まで被ることが、我が警邏部隊の正装ですので」
そう告げて踵を返そうとしたが、制止をかける声に彼の足が止まる。答えを言うまで帰さないと言わんばかりの笑みは圧が込めれば、お手上げだと言わんばかりに溜め息と釘を刺してから軍帽を外して見せてくれた。後に不意打ちで軍帽を取られてはたまったものではないらしい。
「願掛けなんです。まだ幼かった頃、一度だけお目に掛かった相手に髪を褒められました。ですので、次会うときまで伸ばしておこうと」
一つに結わえ、丸め軍帽に押し込めていたものは、彼が頸を左右に振ることに呼応し、解け背中に滑り落ちていき、腰より下で揺れ留まった濃い赤の長い髪。
「外見は……正直、あまり覚えていないのですが、合い言葉なら覚えています。“あなたの目と髪は自分と反対だね”と。この言葉の対になると言いますか、続きを知っている相手が」
思い人なのです、と少しだけ表情を崩した。
「そっか」
「第一外交官。くれぐれも、他言無用でお願い致します。女々しい奴と舐められたくないので」
「わかっためう〜」
思いの丈を募らせ、具現化したかのような彼の赤い髪。もはや願掛けの域を超えたそれを女々しいだなんて、馬鹿にして良い代物じゃない。
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紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ＠pc垢 - ミツユキさん» 誕生日プレゼントとしてもう一話更新しました！大きく動いた回(?)となっております！ (2020年7月6日 22時) (
レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
ミツユキ - 更新ありがとうございます。私の、最高の誕生日プレゼントになりました！ (2020年7月6日 18時) (レス) id: c04652f79c (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ＠pc垢 - わぎゃあコメントありがとうございます!!コメント嬉しすぎて語彙力追い付かないです。現時点が今作一番の山場ですが、しっかりとハッピーエンドに向いますので！それまでもう暫くお付き合いくださいませ！ (2020年7月5日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
碧 - コメント失礼致します。とても丁寧に作り込まれたお話で、私の語彙力ではこのお話の素晴らしさを言い表すことが出来ません…！軍パロ作品の中でも特に繊細に作られたお話だと感じました。これからも素敵なお話を楽しみにしています！長文失礼致しました。 (2020年7月4日 17時) (レス) id: 7cbe04ba0e (このIDを非表示/違反報告)
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