お願いポリスマン【d!】

◇ ページ12

どうしてここ迄入ってこれたんだ？

恐怖と驚きでドクドクと早まる鼓動を胸元に手を当てて抑えながらトントンさんの後ろを見ると､そこには可愛らしい笑みを浮かべた同僚がいた｡
ありがとうございますと頭を下げるトントンさんに顔を真っ赤にさせながら大丈夫ですと返していて､なんか疲れた｡

この顔面の良さにやられたか｡
いや分かる｡分かるけど､ここまで連れてくるのは違うじゃん｡


｢場所を変えましょうか｣
｢あ､大丈夫ですよ｡これ渡しに来ただけやから｣


そう言ってカバンから取り出したのは小さな保冷袋｡
開けてと言わんばかりにこちらを見つめて来るため､恐る恐る開けてみるとそこには前に使ったのはおよそ半年前くらいの私の弁当箱が入っていた｡


｢お弁当､朝作ったんやけど渡すの忘れてたんで届けに来ました｣
｢はぁ…？｣
｢料理の腕には自信があるので安心してください！｣
｢そうなんですか｡ありがとうございます｣
｢わ､渡しに来ただけなんで帰りますね｣


今の会話のどこに照れる要素があったのか分からないけど､トントンさんは乙女のように頬を染めた顔をして去っていった｡

折角貰ったんだから食べようとは思うけどお昼休憩はいつも休まずに仕事をしていたから時間を気遣わなきゃ｡
意外と怪しい人物から渡されたお弁当を楽しみにしてしまってる自分がいて､戒めのしてパチンと両手で頬を叩く｡

5番目の元彼がメンヘラチックで手料理にちょっと危険な物入れたりしてたから他人の料理は怖いんだけど､トントンさんは何故か安心感あるし大丈夫だろう｡
ストーカーだけど警察官だし､初めて会った時は殺されかけた所を助けてもくれたしね｡

意外と絆されてしまってる自分の危機感危ういのでは？
ん〜こういう所がストーカーされ易い原因なのかもしれない｡クシャりと髪の毛を乱雑に掻き回す｡

取り敢えず仕事に集中しなきゃ｡
画面に目を向けた時､ブブッと携帯のバイブレーションが弟からメールが届いたことを知らせてくれる｡

珍しい｡
実はストーカーだった事が発覚した可愛い弟からメールが来るなんて､何かあったのかな｡


『トン氏も駄目だ！！アイツは姉さんのストーカーなんだぞ！！』


取り敢えず､脳みそを空っぽにして『お前のストーカーなんだよなぁ』と返し､携帯の電源を切って仕事に再開した｡

やっぱ仕事しか勝たんな｡

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