《29》 ページ31
幻太郎side
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『げんたろーは、にぃにのことどのくらい知ってるの?』
正直、彼女のその問いには驚いた。
"どのくらい知ってるの?"
なんて答えばいいか戸惑う。
乱数について知ろうとすればするほど、近付けば近付くほど、乱数は"何か"を隠すように離れていく。
俺が知っているのは、飴村乱数という名前、職業、神宮寺寂雷と因縁関係にあること、何か裏があることや他の小さな、些細なことくらいだ。
俺は、最初に嘘を吐いた。
「全て知っている」と。
彼女を見ると驚いていた。そして、俺が嘘をついたのにも関わらず、何か分からないが必死に考え込んでいた。
そんな彼女に「嘘です」と言う。
また彼女は驚いた。
その後、俺が乱数について知らないと真実を話していると、どこかホッとしていたような、悲しんでいるような瞳をしていた。
瞳が揺れ、彼女が俺を呼び何かを話そうとした時。
奥の扉が開き、乱数が来た。
彼はソファーへダイブし「まとまらない」と言いながら寝転がった。
俺に気付いていなかった。いや、敢えて無視をしていた乱数に「珍しいですね、乱数」と話しかけた。
彼は白々しく「あれ、ゲンタロー?なんだ、来てたんだ」なんて言った。
その後、Aは乱数の指示(半ば強制)でモデルとして服を着ることになった。
何でも奥の部屋に既に準備されていたとか。
乱数の仕組んだ通りにことが進み、彼と二人きりになった。
少し間が置いてから、乱数の口が開いた。
乱数「幻太郎、Aと何の話をしてたの?」
幻太郎「ただの世間話ですよ」
乱数「...ふ〜ん...」
飴を舌の上で転がして遊ぶ乱数。だけど、たまにガリッと飴が砕ける音が聞こえる。
乱数といる今の居場所は、どこか雰囲気がピリッとしている気がする。
嘘も吐いていませんし、乱数を怒らせるようなこと、小生何もしていない気がするんですけどねぇ。
乱数「...幻太郎」
幻太郎「!」
乱数「俺の詮索は止めろ、その為だけにAも使うな。
アイツは何も知らなくていい。
知らなくていいんだ。
...わかったか」
乱数のいつも以上に低い声に、思わず驚いた。
最後に乱数の放った"わかったか"というハテナもないその言葉は、単なるいつもの"お願い"ではなく、強く縛られるような"命令"だった。
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はる猫Blood(プロフ) - 由美子さん» コメントありがとうございます!そう言って頂いて嬉しい限りです! (2021年3月11日 16時) (レス) id: 29336fe771 (このIDを非表示/違反報告)
由美子 - 可愛すぎて尊い! 私もこの妹の立場にいたらどんなに幸せなんだろ (2021年3月11日 15時) (レス) id: 6fa9dce11e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はる猫Blood | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/RcKHYu2S7c1/
作成日時:2019年2月24日 17時