アメジストを守る黒曜石 Ⅱ (ページ42)

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第85話だんけつページ42

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「4歳以下は農園(ここ)に残す」

「……え？」

「でも諦めたわけじゃない。 “今は”つれてかない……」

全員が塀を上がり終えてからエマが言った。

俺が感じた胸騒ぎの正体はこれだったのか。

けど、今は……って。

「2年以内に必ず戻る。そしてその時こそフィル達と…………」

「他4つのプラント全ての子供たちを連れて出る！！」

こいつはなんてことを言い出すんだ。

つまり、それって……

────この農園をブッ潰すってことか！？

言うのは簡単だが無謀にも程がある。

俺には未知の世界だ。

けど、現にエマは今15人の家族を連れて逃げている。

3ヶ月前の宣言を実行させてみせている。

エマ……お前なら本当に────

「────っ！！！」

瞬間、農園(ハウス)中に抑えた耳をも貫く喧しい音が響き渡った。

今まで聞いたことの無いそのサイレンに、俺とエマの足も止まる。

「通報……予定より早いな」

「どうする！？まだ橋まで全然遠いぞ」

ダメだ……どう考えても間に合わない。

これでは橋に着く頃には警備は完成されている。

どうする……！？どうすれば……

「問題ない。元々橋へ向かうつもりはない」

……は？

「ここから対岸に“渡る”」

そう言ってエマは、向こうにある森を指さした。

……“渡る”だと！？

一体何で？どうやって？？

という疑問はあっさり打ち砕かれた。

石を縛り付けた簡易ロープ三本。

ドンが慣れた手つきで向こう岸の木に絡みつけたから。

「っし！！」

「イエー！」

そして反対側を後ろの木に縛り付けると、洗濯ハンガーを使ってロープウェイのように滑り渡っていく。

ドンが辿り着き、明かりをこっちに振ったのを合図に。

「OK！次は俺たち！」

「せーのっ！」

ラニとトーマがロープを括りつけたペットボトルロケットを噴射する。

ボトルは崖を越え、ドンの元へと辿り着くと、ロープを近くの木に硬く縛り付けて再び合図を送った。

「さ、みんなも順番に準備して」

「じゃあお先にレイ！」

無駄ひとつない的確な行動力。

乱れない団結力。

何よりこの手際の良さ。

この自信……落ち着き……。

普通ビビるだろ。

“できねぇ”だろ。

信じられねぇけど……こいつら本気で────

────この二ヶ月間の間に……！！

「どう？」