アメジストを守る黒曜石 Ⅱ (ページ41)

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第84話独りページ41

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瞬間、Aが目を丸くして固まった。

2ヶ月も話さなかった奴が急に声をかけてきたらそりゃ誰だって驚くだろう。

その証拠に警戒するような目で俺を睨んでる。

腕が痛くて仕方ない癖に。

けど、当然だ。

「お前が俺の手を取りたくないのも分かる。それだけ俺は、お前を傷つけた……」

ちゃんと向き合う事をしなかった。

話さないことがお前を守ることだと勘違いした。

6年越しの準備だって、勝手にジサツするための計画に過ぎなかった。

Aの言う通り、俺は臆病者だ。

「どれだけ謝っても許されることじゃない。そんなこと分かってる……けど俺は、これからもずっとお前といたい」

「……っ」

「俺にはお前が……Aが必要だから……頼む────」

「俺を“独り”にしないでくれ」

空気になった2ヶ月間が本当に辛かった。

こんな思い、もう二度としたくない。

もう二度と失いたくない。

久しぶりに握った腕はとても震えていて。

一回り細いその腕を、俺は精一杯の思いで引っ張った。

初めて見るハウスの外。見つめる瞳は怯えていた。

真っ暗闇が広がる目の前の光景は、暗所恐怖症を怖がらせるには十分だ。

「……A、俺さ────」

「その話は後でしようよ」

「今はここから逃げるのが先。塀を上ってもまだ先がある。生きなくちゃ…… 今度は“作られた幸せ”じゃなくて、“自分たちの手”で1から幸せを作るために」

遠くを見据えるAの手は震えていた。

怖いなら怖いって言えよ。
弟妹達に気を使って強がる必要なんてねぇよ。

「大丈夫……。私達ならきっと明日を掴める。皆で生きよう……今度こそ“家族全員で”自由になろう」

“家族全員で”

その言葉が妙に引っかかって胸騒ぎがする。

これで……“全員”？

こっちに近づくAと目が合った。

何ヶ月振りかに見る紫色の真っ直ぐな瞳は相も変わらず綺麗で、愛おしい。

「お兄ちゃん」

「────！！」

「私、待ってるよ」

紫色の温かい風が横を通り過ぎた。