アメジストを守る黒曜石 Ⅱ (ページ33)

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第77話本音ページ33

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“お兄ちゃんは臆病だ！！”

Aの猛攻はその一言から始まった。

烈火のように激しい怒りの感情のままに暴れて俺を罵倒する。

最初は口だけだったものが次第に酷くなって、遂に身の回りの物を投げつけた。

本棚に仕舞われた本、さっきまで座っていた椅子、一生懸命育てた花を生けた花瓶…………

『臆病者だから本当のことを言うのが怖いんだ！！結局逃げることしかできないんだ！！！』

『“傷つくのは俺だけで十分”なんて全っ然かっこよくない！！最初から無理なくせにカッコつけんな！！！』

俺は恐怖で逃げることしかできなかった。

Aがキレるとこんなにヤバいなんて思いもしなかったから対処法が分からない。

下手に手を出しても刺激するだけで逆効果だ。

本当にこれがA？

あの温和で争いごとが嫌いな俺の妹？

違う。目の前にいるのはまるで。

────────“人”の姿を借りた“狼”

人の言葉なんて届かない。

何も言っても聞く耳さえ持ってくれず、狼は目の前の獲物(おれ)を狩ることだけを考えている。

このままじゃ死ぬ、そんな妄想さえ浮かんだ。

物音を聞き付けたドンとギルダが来てくれて本当に助かった。

エマも加わり、3人共図書室の荒れ具合とAの豹変ぶりに状況が上手くのみ込めない様子。

俺が呆然と立ち尽くすエマの名前を叫んだ途端、急にAが大人しくなった。

「ずるいよ……ずるいよぉ……」

透明な血が赤い血と混ざりあう。

ぽつぽつ流れる度に、Aの口から1つ、また1つと言葉がこぼれた。

「図書室の本も全部読んで……嫌いな勉強だって……フルスコア取るために頑張ってきたのにいつもダメで……悔しくてっ……」

「運動はできないけど……かくれんぼなら誰にも負けない自信があるし………弟妹達のことだって……私が1番面倒を見てきた……」

言葉。そんな生ぬるいものじゃない。

どれも全部、今までAが溜め込んできた“本音”だった。

「少しでもお兄ちゃんに近づきたくて……認めてもらいたくて頑張ってきたのに……」

「…… なんで私には“後で”があって……エマとノーマンには“後で”がないの……？……なんで私には“関係ない”のに……ドンとギルダには“関係ある”の……？」

「わかんない……わかんないよ……」って子供のように泣きじゃくりながら、Aの口からもれる言葉の一つ一つが。

俺の心を抉った。