アメジストを守る黒曜石 Ⅱ (ページ16)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:64,584 hit

第60話あふれたページ16

【ノーマンside】

医務室のベッドに横たわるエマ。

右脚に巻かれた包帯とギブスがとても痛々しい。

僕がもっと早く反応できたらエマはこんな怪我をしなかったのかな……なんて自分を責めてたって、何も変わらないことも分かっていた。

「まってて、お水とってくる」

顔色が蒼白したエマのためにそう言って僕は医務室を出た。

入れ替わりで弟妹達がエマの名前を呼び医務室の中に入っていく。

………………。

────情けないな僕は

エマにあんな顔させて。

僕はエマに笑っていてほしいのに。

本当に情けない……。

食器棚からガラスのコップを取り出して水道の水を捻った。

コップにどんどん水が注がれる。

水のひんやりと冷たい感触が左手に伝わってくる。

“冷たい”って感じる。

“呼吸”だってしてる。

“声”が聞こえる。

“心”だって……。

“──僕は今……確かに生きている”──

決めたはずなのに、覚悟だってしたはずなのに。

────こんなにも生きたいなんて……！！

器に収まらない水が溢れた。

それはまるで、“生きる”という器に入りきれない僕だ。

僕も…………死んで(溢れて)しまう。

嫌だ……嫌だ。

まだ生きたい。

死にたくない。

みんなで一緒に……エマと一緒に…………

生きたい

生きたい

────生きたい！！

蛇口に添えていた手が離れ、膝から崩れ落ちた。

ドバドバ溢れる水はどこに行くのだろう。

器の中に収まっただろうか。

それとも弾かれて流れ落ちてしまったのだろうか。

辛いよ。痛いよ。

────誰か……助けて……

「ノーマン」

……嘆きが、届いた……？