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そういえば去年は、俺のライターで火をつけようとして結局つかなかったんだっけ。
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去年は。一昨年は。その前は……。
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こんなに振り返る記憶があるなんて、幸せだと思う。
だから、来年も今日のことを思い出して幸せな一日にしたいと思った。
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「よーし、ついた」
「つけたの俺な」
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ゆらゆらと揺れる火が一気に存在感を醸し出したのは、
Aがカーテンを閉めて電気を消したからだ。
まだ昼過ぎなのに、暗い部屋で二人寄り添っている。
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「お誕生日おめでとう。潤」
「……ありがとう」
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また、それだけかと訊かれるかと思ったけど、今度は優しく微笑むだけだった。
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「クリーム溶けちゃうから早く消して！」
「うん」
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催促するわりに、ハッピーバースデートゥーユー、と歌い始めるから消せない。
君の潤んだ瞳に、ゆらゆらしている火が映り込んできらきらさせる。
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その可愛い笑顔は、誰にも渡したくなくて。この手でずっと抱き締めたくなる。
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「ハッピーバースデー・ディア・潤！ ハッピーバースデートゥーユー！」
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消せ、と言わんばかりの笑顔でこっちを見つめるから、震える唇でそれを吹き消す。
一層暗くなった部屋で、そっと。Aを抱き締めた。
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「……お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
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何度このやり取りをする気だろう。
綺麗に伸ばされた髪を撫でてみたけど……俯いたまま。
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作者名：義経櫻 | 作成日時：2015年6月13日 23時
