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「先生！ 特別授業して！」
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まさか自分が8つも年下の、しかも女生徒に懸想するなんて思いもしなかった。
自分に限ってそんな馬鹿げたことはしないだろうと高を括っていた。
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「俺はな、時間外労働はしないの。授業休んだのは自分の責任だろ」
「うわー先生最低。可愛い生徒が先生の授業受けたくてたまらないからわざわざお願いに来てるのに」
「それが物事を頼むやつの態度か！ せめて敬語を使え！」
「え、やだ。だって絶対櫻井先生、先生たちのなかでも下っ端じゃん！」
「下っ端とか言うな！ 事実でも言っていいことと悪いことがあるって知ってるか！？」
「ふふ、やっぱそうじゃーん。下っ端なら下っ端なりにがむしゃらに働いてよ」
「生意気言うなよ。高校教師がどれだけブラックな職業か知ってるだろ」
「中学よりはマシなんじゃない？ 私の中学、先生どんどん辞めてったよ」
「保科、どんだけ大変な中学通ってたの」
「んー……なかなかアグレッシブだったかな」
「ふっ、はっは！ よく生き抜いたな、偉い偉い」
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誰にでも尻尾を振って、いつでも気丈な顔をする優等生の君が、一度だけ俺の前で泣き崩れたことがあった。
偶然廊下ですれ違ったとき暗い顔で俯きながら歩いている君を見つけて、
思わず問うたら
ぽろりと透明な涙が重力に逆らえず落ちたのを今でも鮮明に覚えている。
そのまま鍵を掛けたばかりの物理室に連れていき、
途切れ途切れに告げられる君の言葉を聞いた。
正直俺には解決のしようのない悩みだったし、
なんて言ってあげれば君の心が休まるのか、俺には検討もつかなかった。
ただ、――ただ悩んで苦しんで傷ついて、そんな純情な涙を美しいと思って、
今まで動かなかった心の一部が突き動かされたような衝動を感じた。
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作者名：義経櫻 | 作成日時：2019年3月9日 23時
