一目惚れ -ytym-

約束 ページ11

yt side



あれから結局、一度も連絡できていない。
また話そう、とは言ってもらえたものの、そんな頻繁にメッセージなんて出来ない。
結局、短いやり取りを何度も何度も読み返すことになる。
あー、話したい。会いたい。触れたい。
そんなふうに悶々としていると、家の呼び鈴がなった。
もしかして、山田さんだったりして。
そう微かな期待を込めて二階の窓から下を見下ろすと、宅配業者の制服がチラリと見えた。
急いで階段を駆け下り、玄関のドアを開ける。
そこにいたのは……。
山田さんじゃ、なかった。
まあそうだよね。体型違ったし。
あからさまに表情が曇ったのだろう、荷物を持った男性が顔をしかめる。
適当にサインを書き、荷物を受け取った。印鑑を取りに行くのも面倒臭い。
荷物を受け取り、リビングのテーブルに適当に置く。甘い匂いは、しない。
でもこれで決心がついた。
待っていたらダメだ。連絡しよう。


(山田さんこんにちは。お話ししたくて送っちゃいました。お返事、待ってます)


送った後、五、六回読み直す。文章、少し変だったかも。
送信を取り消そうとメッセージを長押しした途端、既読がついた。
慌ててスマホの電源を切り、返事を待つ。
しかし……待っても待っても返事はこない。
おかしい。時計を見ると、既読がついてもう30分は経つ。
もしかして俺、キモがられてる？それとも、焦らされている？
この際拒絶されてもいい。返事が欲しい。既読無視が一番辛い。
と思ったと同時に、通知音がなった。


〈お返事遅くてごめんね。ちょっと焦らしちゃった笑 お話、しよっか〉


……やられた。とんでもない人だ。


(やった！山田さん、俺に聞きたいこととかありますか？)
〈うーん、じゃあ趣味！〉
(いろいろです！乗馬にタップにドラムに、カメラも好きです！山田さんの写真撮りたいなー笑)
〈おー多趣味。俺の写真、撮る？撮ってもいいよ〉


スマホが手から滑り落ちた。
今なんて？写真を撮ってもいい？


(え、マジで言ってますか？撮りたいです！！)
〈いいよ。いつでも撮らせてあげる〉


それって直接会って、という意味だろうか？
確かめると、会わずにどうやって撮るの、と正論が返ってきた。
思いっきりガッツポーズ。
その後すぐに空いている日時を確かめ、無理やりながらも一週間後にデートの約束にこぎつけた。
よくやった、俺！

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