五章 ページ23
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禄朗から連絡がきたのはそれから数日後のこと。
「出てこれる?」
電話先に聞こえてくる甘さを含んだ声に誘われて、胸が高鳴るのを感じる。また会えると思うだけで幸せな気持ちになるこれを、どうして捨てられることができるというのか。
待ち合わせ場所のバーの扉を開くと、カウンターに腰かけて楽しそうにお酒を飲む禄朗の姿が真っ先に飛び込んできた。ああ、大好きだ、と反射的に思うのはどうしようもない。
優希に気がつくと、軽く手をあげて合図を送ってくる。並んでお酒を飲んでいたら、当然彼の腕が腰を抱いてくる。その手のひらの大きさも体温が伝わるのもすべてが優希をときめかせる。
熱くなる頬をごまかすようにグラスを当てていると、ふいに禄朗が話題を変えた。
「この前は大丈夫だった?」
「この前?」
「明日美ちゃん、怒ってなかった?」
ああ、そのことかと途端に気持ちが重くなる。
「うん、大丈夫だった。でも寝ないで待ってたみたいだから可哀そうなことをした」
「ふーん、健気だね」
マスターにお代わりを頼みながら、禄朗の手は優希のお尻の曲線を軽く撫でていく。
「今日はどうなの?」
「……遅くなるって、連絡しておいた。先に寝てていいよって」
「そ」
正直なところ、これからどうすればいいのかわからない。現実としてあのままの明日美を放ってはおけないだろう。彼女にはなんの罪もなく、まして子供に可哀そうな思いをさせるのは気が
偽善でも、もっとひどいことをしている自覚があってもどうしても捨ておくわけにはいかない。
かといって禄朗と別れることができないのはわかっていた。耐えられるはずがない。声を聴いてしまえば、会ってしまえば、たまらなく恋しい。好きで、好きで、彼でいっぱいになってしまう。
そんな
「好きだよ」と優希はつぶやいた。
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モノモノ(プロフ) - 花奏さん» 普通に続きますよ。この後も悲劇の連続なので、書くのが苦しいです(>_<)でも頑張って続き書いていくので、よろしくお願いします! (2021年4月12日 7時) (レス) id: 995658f693 (このIDを非表示/違反報告)
花奏(プロフ) - これ続きますよね、?深夜ながらに泣いてしまいました……。とっても素敵に物語が動いていて、私の心情が左右しまくっています! (2021年4月11日 23時) (レス) id: ed1d1a00c3 (このIDを非表示/違反報告)
モノモノ(プロフ) - 夜市さん» わざわざ感想ありがとうございます。情景描写の書き方は今でも尚苦戦します。亀更新になりますが、よろしくお願いします。 (2021年4月7日 22時) (レス) id: 995658f693 (このIDを非表示/違反報告)
夜市 - 情景描写や心情の表し方がとても繊細で、素敵な話ですね。お体に触らぬ程度に更新、頑張ってください。 (2021年4月7日 14時) (レス) id: 5befe0aadf (このIDを非表示/違反報告)
モノモノ(プロフ) - 花奏さん» 感想ありがとうございます。明日美ちゃんが可哀想になってきたけど、頑張って更新したいと思います。 (2021年3月10日 8時) (レス) id: 995658f693 (このIDを非表示/違反報告)
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